Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.39
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2008  39
学会印象記
東京大学大学院人文社会系研究科 グローバルCOE冬季セミナー
「死生学の展開と組織化」〈医療・介護従事者のための死生学〉に参加して
弘前大学医学部附属病院 緩和ケアチーム  佐藤哲観
 平成20年1月12日から14日にわたって東京大学で開催された上記セミナーに参加する機会を得た。3日間という長丁場にもかかわらず約100名が参集し、この分野への関心の高さが窺えた。全国から集まった受講者は、その大多数が医療従事者であったが、緩和ケアとは縁遠い参加者も多数いたようである。
 内容は講義と演習であった。講義においては、「死生学とは何か」、「日本人の死生観」、「現代哲学における死の思考」、「仏教における死生観」、「20世紀心理学の死生観」、「臨床死生学とは・ケアにおける死生の理解と価値観・臨床倫理・スピリチュアルケア」、「生と死における医療者自身の当事者感覚と診療スタイル」、「日本人の死生観とがん治療」、「死と死に行くことの社会学」、と題して宗教学、倫理学、哲学、医療社会学、臨床倫理学、医療現場の各専門家がそれぞれの視点から死生学や死生観についての歴史的背景や理論を展開した。日々の臨床から離れてどっぷりと死生に関する思索に浸ることができた。演習では、参加希望者が応募時に提出した臨床事例が「臨床ケース集」として参加者全員に配付され、そのうちの2事例についてスモールグループ・ディスカッションと全体討論が行われた。幸か不幸か、私が応募時に提出した事例が題材の一つとなった。様々な葛藤の中で終末期に至った50代男性がん患者と家族の事例で、緩和ケアチームとしての毎日の関わりの中で、患者や家族とどのように死生観を共有できるだろうか、またその死生観に寄り添うケアとは、ということを強く意識した事例であったが、様々な視点やケアのあり方について多くの示唆を得た。
 「何かを教授する」のではなく「医療者と人文系の研究者とのクロストークの場を設けて一緒に考えたい」という主催者側の意図が明確であった。ともすると殺伐となりがちな現在の医療には、人文科学的な叡智に学ぶべき点が多々あるとの思いを強くした。医学系セミナーでは味わえない深みに満ちた3日間であった。

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