Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.39
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2008  39
巻頭言
いのちを支え、いのちをつなぐ(続)
十和田市立中央病院  蘆野吉和
 今、新天地に移り、緩和ケアの理念を基本とする病院づくり、地域づくりを始めています。病院は十和田市(青森県)の中核病院、緩和ケアに関しては“標準的”な病院で、痛みを含め苦痛はあまり取れておらず、家族へのケアは皆無で、医療従事者も地域住民も病院で最期を迎えることを当然と考えていますし、在宅ホスピスケアを含め緩和ケアの情報提供もありませんでした。医療従事者のパターナリズムもまだ強く残っており、“患者中心”、“医療サービス”、“チーム医療”という言葉はあまり聴かれることのない状況でもありました。
 このような病院および地域で、私の理想とする緩和ケアをどの程度普及できるのか、できるとしたら、どの程度の時間がかかるのか、それを確かめるため赴任を決意しました。
 丁度強い追い風が吹き始めました。「がん対策基本法」そして在宅医療推進の風です。従来のがん治療に緩和ケアを積極的に取り入れる包括的がん医療提供体制の整備、在宅ホスピスケアの推進とそのための病院診療所との切れ目のない医療提供体制の整備など、今後の医療の目指す方向性がはっきり明示されました。私の理想としている緩和ケアです。
 約2年経ち、病院には緩和ケアチームを含め6つのチームがあり、組織横断的に活発に活動しています。緩和ケアチームは緩和ケア診療加算が認可され、一部緩和ケア科として病床をもち、外来も開設しています。緩和ケア外来は昨年10月から「がん総合診療外来」と改名し、終末期のみならず幅広い病期に対応する体制としました。また、在宅ホスピスケアも敢えて地域の訪問看護ステーション、保険薬局と連携し、すでに50名を超える方が自宅で亡くなっております。思った以上に多くの人が自宅で最期を迎えることを希望していることがわかり、逆に戸惑っています。
 今年5月には新病院への移転を契機に、病院の理念を変更します。「『いのちを支え、いのちをつなぐ』医療の実践」が理念となり、緩和ケアを基本とする医療を行うことを基本方針の一つとしました。
 順調に行っているようでも懸念は多くあります。医師の意識はあまり変わりません。しかし、看護師とコメディカルの意識を変え、動きやすいようにすることで緩和ケアは普及します。地域住民も効果的な症状緩和治療を行い、自宅に早く戻す事で緩和ケアに対する悪いイメージも変わってきます。一つの地域での着実な取り組みが日本を大きく変えてゆくことを期待して、また、一歩前に進みたいと思います。

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