Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.38
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2008  38
書評
がん緩和ケア最前線
著者 坂井かをり/岩波新書(740円)
シムラ病院 リハビリテーション科  渡邊寿愛
 「緩和ケア」という言葉を、がんとの闘病の末に治療を断念し、せめて最期に苦痛を除去する「ケア中心の何もしない医療」と考えている患者・ご家族の方は少なくないのではないだろうか。もしかすると医療スタッフの中にもそのように考えている人もいるかもしれない。本書はそのような誤解を解き、WHOが推奨しているがんと診断された時期からの緩和医療について分かりやすく紹介している。
 8人の事例を通して癌研有明病院で実践されている緩和医療が解説されている。今まで受けていた治療に違和感や十分な満足感を得られなかった方々が、「ここに来てよかった」「本当に毎日が幸せ」という言葉を残していた。それは患者ががんと向き合い、前向きに生きる手助けをし、「苦痛を取り除きながらがんとの共存する医療」を提供していたからだという。
 このような医療は特殊な一施設にしかできないものなのだろうか。否。本書は特定施設の特定の医療の紹介ではなく、患者の苦痛と向き合うこと、医療スタッフが「十分すぎるくらいの説明」や「私たち(患者・ご家族)の分かる日本語での説明」をすること、皆が緩和医療の本質を理解することの重要性を繰り返し強調していた。これらは特定の施設でしかできないことではない。巻末の章でもブルエラ氏はここ10年でさまざまな進歩が見られたと述べ、特に重要な進歩として患者・家族に対するコミュニケーション技術が進んできたと述べている。この技術は特定のところでしか学べないものではない。評者は平易な言葉で緩和医療の本質を述べる本書を読み進めるにつれて、著者が「医療人であればこれくらい分かりやすく患者さんとご家族に説明してください」と強く語っているように感じた。本書は一般の人にとっては緩和ケアを理解するために、医療スタッフにとっては緩和ケアを実践するにあたってどのように患者・家族に寄り添って納得のいく説明をするべきかについての啓発のために熟読に値する一冊である。

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