Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.38
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2008  38
学会印象記
コミュニケーション技術研修会(第1回於大阪)に参加して
社会保険中京病院緩和ケアチーム  吉本鉄介
 今回、コミュニケーション技術訓練(CST)の研修会に参加した。参加の動機は、(1)拠点病院として医師の告知技術を標準化する、(2)チーム医療として適切な時期に緩和ケアを患者が選択し受容できるように、治療医の情報提供能力を養成する、の2点であった。また個人的動機としては、「使える抗がん剤はもうありません」と外来で告げ数日後に自殺、という経験だった。10年以上前のことだが思い出せば手を合わせ、どうすればよかったか今も考え続けている。
 本研修会の冒頭で、がん対策推進協議会(18名)の必須メンバーである患者会代表(4名)が、医師が「悪い情報」告げる際、「特別の配慮」をするべく要求した事を受けての事業であると説明された。つまり実体験に基づく事業であり、不適切な告知(過去の自分も含め)がいかに多いかが理解できた。また全国ネットのテレビ局の取材もあり、世論の期待が大きい事も伺えた。
 研修は2日間(約14時間)にわたる濃密なもので、16名の医師がCSTの総論とSHAREの講義を受けてから、個別の教室で医師4名1組に2人の認定Facilitatorを1チームとし、ワークショップ(WS)タイプのCSTを計8回受けた。SHAREとは日本オリジナルのコミュニケーションツールである(SHAREは調査結果から抽出された各因子の頭文字)。北米のSPIKESとの違いは、「日本人らしい感情」つまり文化・精神的背景に対応している点であり、患者会の「特別の配慮」という要求に応えるものといえるだろう。
 WSのコアはロールプレイ(RP)であり、模擬患者(SP)に対面し、「悪い情報」を外来診察室にて告げるという設定だった。自分で選択できるのだが病状の設定は実に詳細で、SPも訓練を受けており実地臨床に近いリアルさが感じられた。治療に納得せず泣いたり怒ったりする難しいモードのSPもあり、研修である事を一瞬忘れるほどだった。また、Facilitatorの役割は会話のキーワードをSHARE各因子として抽出し白板へ書き込みつつ、全員の議論を集約することだった。その理想の医師像を強制せずRPを通じて全員で考えるスタンスに好感がもてたが、逆に相当な力量・経験が必要だと思われた。よって著者もFacilitator養成に挑戦する事を決意した。
 本研修会を開催された方々のご尽力には敬服するが1回16名が限界だと思う。一方「特別の配慮」をすべき医師の数は膨大な数であり、CSTは各施設で受講者から連鎖反応的に広げていく必要がある。当院がその1モデルとなりSHAREが常識となる日を目指し努力したい。

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