Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.38
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2008  38
Current Insight
終末期がん患者の不眠に対するミダゾラム、フルニトラゼパムの点滴静注法:日本における多施設研究
埼玉県立がんセンター 緩和ケア科  松尾直樹
Matsuo N, Morita T
Efficacy, safety, and cost effectiveness of intravenous midazolam and flunitrazepam for primary insomnia in terminally ill patients with cancer: a retrospective multicenter audit study. Journal of Palliative Medicine 2007;10:1054-1062

 日本ではミダゾラムとフルニトラゼパムの点滴静注が、がん患者の不眠に対してしばしば施行されている。しかし、それらの有用性に関する研究はされていない。ミダゾラムとフルニトラゼパムにおいて有効性、安全性、耐性、対費用効果について比較するために、多施設研究を行った。
【対象】
 緩和ケア病棟18施設において不眠に対してミダゾラムまたはフルニトラゼパムの点滴静注を施行したがん患者。
【方法】
 多施設共同後ろ向き研究(カルテ調査)
【結果】
 各施設におけるミダゾラムまたはフルニトラゼパムの点滴静注の施行率は死亡退院患者の1.9〜44%(中央値15%)。ミダゾラムの点滴静注を施行した患者は104名、フルニトラゼパムの点滴静注を施行した患者は59名であった。
 投与期間(中央値)はミダゾラム群6日、フルニトラゼパム群9日。初回投与量(中央値)はミダゾラム群10mg/一夜、フルニトラゼパム群2mg/一夜。最大投与量(中央値)はミダゾラム群18mg/一夜、フルニトラゼパム群2mg/一夜。
 初回投与の有効率はミダゾラム群(91%)がフルニトラゼパム群(81%)に比べ、高い傾向にはあったが、統計学的な有意差は認めなかった(p=0.08)。ミダゾラム群、フルニトラゼパム群において持ち越し効果(34% v.s. 19%)、夜間譫妄(12% v.s. 10%)、翌朝の譫妄(11% v.s. 15%)、投与中止(4.8% v.s. 1.7%)、治療関連死(0% v.s. 0%)に有意差はなかったが、フルニトラゼパム群(17%)はミダゾラム群(3.8%)に比べ有意に呼吸抑制の頻度が高かった(p<0.01)。
 投与期間と最大投与量は両群とも相関したが、ミダゾラム群のほうが相関関係が強かった。14日以上投与した患者において、増量率はミダゾラム群のほうが有意に高かった(p<0.05)。
 初回投与および最大投与時の費用はミダゾラム群のほうが有意に高かった(p<0.001)。
【結論】
 ミダゾラム、フルニトラゼパムの点滴静注は有効性、呼吸抑制を除く有害事象においてはほぼ同等であるが、フルニトラゼパムのほうがより費用が安く、耐性が少ないことが示唆された。これらの示唆を検証するための前向き比較試験が必要である。
【コメント】
 このような不眠に対する鎮静薬の点滴静注法は、以前のアンケート調査(J Pain Symptom Manage 30;301-302, 2005)で明らかになったように、本邦では80%の緩和ケア施設で施行されていますが、海外ではほとんど行われていない方法のようです。今後、このような本邦において経験的に行われている緩和的な治療方法を多施設研究により検証していく必要があると思います。

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