Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.38
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2008  38
巻頭言
日本緩和医療学会に期待されること
広島大学大学院・精神神経医科学  山脇成人
 日本緩和医療学会の第1回総会が柏木哲夫会長の下で1996年7月に札幌市で開催されて以来、本学会は13年目を迎える。筆者は発起人として設立にかかわりともに歩んできたので、この間の本学会の成長を実感している。本学会がわが国の緩和医療の重要性に関する啓発に大きく貢献してきたが、これからは具体的な緩和医療実践の普及と人材育成にどう貢献するかが問われている。
 本学会の活動に最も共感したのはがん患者・家族であり、その声にも押されて2007年4月からがん対策基本法が施行された。この法律では、がん医療における緩和医療の重要性は明文化され、自治体もがん診療連携拠点病院を中心に緩和医療を推進する責務が明確に記載されている。しかしながら、がん患者・家族の期待に応えるだけの人材が養成されておらず、がん医療現場では緩和ケアチームなど形だけが先行して中身が伴わず、混乱を来しているのが現状である。
 人材は一朝一夕に育成できるものではないので、その体制整備や教育プログラム作成が急務であり、人材育成に関して本学会に対する期待は大きい。すでに教育研修委員会やガイドライン作成委員会が活発に活動しているが、各委員の負担も急増しているので、会員の皆様の協力を強くお願いしたい。また、大学医学部、保健学部、薬学部、心理学領域などにおける緩和医療教育カリキュラムの充実も不可欠である。文部科学省もがん専門の医師、看護師、薬剤師の養成のためのプログラムとしてがんプロフェッショナル養成プランを昨年度から実施しているが、まだ十分に機能しているとは言い難く、緩和医療に関しては本学会との有機的な連携が必要である。
 本学会員はこの数年急速に増加し、6,000名を越える大規模学会に成長している。規模が大きくなることはよいことばかりではない。緩和医療は本来、患者と医療従事者が1対1の関係性の中できめ細かく行う地道な医療行為であるが、学会が大きくなると必然的にお互いの顔が見えにくくなり、マニュアルやガイドラインが一人歩きする危険性がある。また、大都市でしか学会が開催できなくなり、会場も大きくイベント化しやすくなりがちである。本学会の目的を実現するためには、患者一人一人に行き届く緩和医療を基本原則として、徹底した症例検討、チーム医療のあり方、在宅医療への展開などについて議論する場を大切に確保する必要がある。また、大都市でなくても参加できるワークショップなども会員の声に耳を傾けながら企画することも忘れてはならないであろう。

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