Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.37
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2007  37
Journal Club
日本の緩和ケア病棟におけるメチルフェニデート(リタリン®)の使用の実態
埼玉県立がんセンター 緩和ケア科  松尾直樹
 メチルフェニデート(リタリン®)は中枢神経刺激薬として、進行がん患者の抑うつ状態、オピオイドによる傾眠、全身倦怠感、臓器不全による低活動型せん妄、脳腫瘍による認知障害に対して使用されており、その有用性がいくつか報告されている。しかし、最近の全身倦怠感に対するメチルフェニデートのrandomized controlled trailでは、プラセボと比較して有意差がなかったとの報告もあり、一定の見解が得られていない。本邦において、メチルフェニデートを用いた介入試験を行う前に、その使用の実態を把握するための全国調査を行った。
【方法】日本ホスピス緩和ケア協会に加盟しているホスピス・緩和ケア病棟163施設の医師に質問紙を送付した。
【結果】回収率69%。メチルフェニデートを使用している施設は91施設(81%)であった。入院患者のメチルフェニデートの使用率は1-50%で、28施設(31%)で5%未満、28施設(31%)で5-9%、20施設(22%)で10-19%、15施設(16%)で20%以上であった。開始量は中央値10mg(範囲5-30mg)、維持量は中央値20mg(5-60mg)であった。抑うつ状態、傾眠、全身倦怠感、低活動型せん妄、脳腫瘍による認知障害に対して、どの程度、メチルフェニデートを適応と考えているかを質問した結果、予後が数ヶ月と考えられる場合、メチルフェニデートを「適応とする」「積極的に適応とする」とした症状はオピオイドによる傾眠(90%)、抑うつ状態(56%)、全身倦怠感(48%)、脳転移による認知障害(4.4%)。予後が数週と考えられる場合、「適応とする」「積極的に適応とする」とした症状は、オピオイドによる傾眠(77%)、抑うつ状態(48%)、全身倦怠感(39%)、低活動型せん妄(8.8%)、脳転移による認知障害(3.3%)。予後が数日と考えられる場合、逆にメチルフェニデートを「適応としない」「例外的に適応とする」がいずれの症状においても大部分を占めた。
【考察】多くのホスピス・緩和ケア病棟においてメチルフェニデートが使用されている実態が明らかになった。投与量は施設間で差は少なかった。また、概ねオピオイドによる傾眠に対しては予後が数週から数ヶ月の場合は適応と考えていた。一方、予後が数週から数ヶ月の場合の抑うつ状態と全身倦怠感については意見が分かれており、今後、根拠に基づいた議論が必要と考えられた。
【コメント】本研究の自由記述では「メチルフェニデートは抑うつを伴った倦怠感に有効だと思う」(n=17)「オピオイドによる傾眠を伴った倦怠感に有効だと思う」(n=9)といった意見のほか、「倦怠感には有効とは思わない」(n=7)という意見もあり、コンセンサスは得られていないようでした。そこで、現在、メチルフェニデートがどのような患者の倦怠感に有効なのか(例えば、抑うつ状態の患者、臓器不全の患者など)を探索する多施設前向き研究を予定しています。ご関心をお持ちの方はメールにてご連絡ください(研究責任者:埼玉県立がんセンター 松尾 直樹matsuo[アットマーク]cancer-c.pref.saitama.jp)。

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