Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.37
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2007  37
特別講演4
The Role of Palliative Medicine in the Care of Cancer Survivors.
演者 : UCLA Schools of Medicine and Public Health  Patricia A .Ganz
座長・報告 : 立命館大学 理工学部/かとう内科並木通り診療所  下妻晃二郎
 今回、UCLA Schools of Medicine and Public HealthのPatricia A Ganz教授(私事恐縮ですが、留学先の恩師です)をお招きできたことは、田中紀章会長をはじめとする関係者の皆様の御尽力のおかげであり、改めて感謝いたします。
 Ganz教授は乳癌、肺癌などを専門とする腫瘍内科医ですが、1980年代から癌の予防と症状・QOLのコントロールの研究に精力を注がれ、中でも乳癌患者の治療がQOLや心理社会機能、性機能に及ぼす影響に関する詳細な研究では他の追随を許さない実績を残して来られました。NSABPなどの大規模癌臨床試験グループ内で健康アウトカム評価の普及に力を注がれ、さらに最近では、患者会との交流や政府機関の委員などを通じて、cancer survivors(補助療法などが終了した後も再発せず生存しておられる患者さんたち:以下survivors)に焦点をあてた医療の仕組みの重要性に関して提言を行ってこられました。
そのような背景から、今回、緩和医療(学会)がsurvivors careにできる役割は何か、という観点からお話をいただきました。
 米国においても高齢化とともに、survivorsの6割は65歳以上に達し、増える傾向にあること、またsurvivorsの31% が自らの健康をfair or poorと答えていること(非がん患者では18%)など、survivorsが抱えている問題点を具体的に示され、現在の医療のしくみではsurvivors careの視点が決定的に抜け落ちていることを強調されました('Lost in transition'と表現されています)。
 さらに、'Survivorship Health Care Delivery'には3つの'P'が必要であると提案されました。すなわち、 (1) Palliation, (2) Prevention, (3)Health Promotion、です。特に緩和医療(学会)の役割としては、後遺障害の(1)詳細な把握、(2)生物学的・心理社会学的メカニズムの解明、(3)効果的な治療やコントロール戦略の立案、(4)悪化を予防する介入の確立、があるとされ、最後にsurvivors careは緩和医療が緊急に取り組まなければならないテーマである、と講演を閉められました。
 癌患者のnatural historyの中で、我々の目が届いていない部分をみごとに指摘され、また克服戦略もお示しいただいた。今後わが国でも、このような取り組みが始まることを祈りたい。

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