Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.36
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2007  36
Journal Club
日本における緩和ケア提供のバリアと
緩和ケア普及のために取り組むべき課題
東京大学大学院医学系研究科 成人看護学/緩和ケア看護学分野  中澤葉宇子
Miyashita M, et al. Barriers to Providing Palliative Care and Priorities for Future Actions to Advance Palliative Care in Japan: A Nationwide Expert Opinion Survey. Journal of Palliative Medicine 2007; 10(2): 390-9.

【目的】
  緩和ケア臨床家たちはケアの提供を阻害する多くのバリアに直面しているが、これまで日本ではバリアについての包括的な調査がなされていなかった。緩和ケアの普及と質の向上に取り組むためには、そのバリアを明らかにすることが重要である。本研究の目的は、緩和ケア専門家の視点に基づいて現状における緩和ケア提供のバリアを明確にし、それらのバリアを克服するために取り組むべき課題を示すことである。
【方法】
  日本緩和医療学会と日本ホスピス緩和ケア協会の会員を対象に2004年12月に質問紙調査を実施した。緩和ケアの提供のバリアと、緩和ケア普及のために必要な取り組みについて、自由回答形式尋ね426通の回答を得た。
【結果】
  緩和ケアの提供のバリアとして95項目が挙げられた。最も多い3つの項目は「一般の医師・看護師の関心・知識・能力の不足(n=208)」「一般の人が緩和ケアの緩和ケアへの知識がない、誤解している(n=122)」「一般の医療者の情報提供およびコミュニケーション能力不足(n=89)」であった。緩和ケア普及のために必要な取り組みには139項目があげられた。最も多い3つの項目は、「病院内で緩和ケア勉強会や症例検討会を開催する(n=122)」「一般集団対象に、緩和ケアに関する情報提供を行う(n=117)」「卒前教育で、緩和ケアを必修科目とする(n=88)」であった。
【考察】
  本研究によって医療者に関連したものだけではなく、経済的な要因や一般集団に関連する多くのバリアが同定された。これらのバリアを克服するためには、医療者に関連する問題に取り組むだけでなく、社会的認知や政策の転換などが必要である。本研究によって、今後、優先して取り組むべき課題が明らかになった。わが国における関連する学会や諸団体が協同してこれらの課題に取り組む必要がある。
【コメント】
 本報告は426名の専門家からの自由記載による回答を内容分析によって詳細に分析した結果である。論文に掲載されたデータは特に回答が多かったカテゴリであるが、これらはわが国の緩和ケアにおける喫緊の課題と必要な取り組みを示している。緩和ケア提供のバリアと取り組みについての具体的で詳細な項目については報告書の形でまとめられており、著者に連絡することによって入手することが可能である(miyasita-tky○umin.ac.jp ※ スパムメール防止のため、E-mailの「@」の部分を「○」に変えて掲載しています)。

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