Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.36
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2007  36
臨時企画 パネルディスカッション
終末期におけるがん緩和医療のあり方を考える −標準化と多様化の狭間で−
メディアからみた標準化
ロハスメディア代表取締役  川口 恭
 マスメディアの本質は、物事を単純化してレッテルを貼ることにある。media=媒体と人間の能力には物理的な制約があり、無限とも言える広がりを持つ世の中の事象を忠実に再現すること、受け取ることは不可能だからだ。もちろん単純化そのものが悪いのではなく、雑多な事象の裏に隠れた本質を切り出すことができれば、その影響力は絶大なものがある。
 ただし現在のメディアでよく起きているのは、本質と異なる部分への単純化である。メディア内の教育不全により、本質を切り出す努力は教えられず、単純化の技術のみが伝承されている。この結果、メディア人の多くは単純化こそが自らの職務で、単純化は無条件に善であると信じこみ、本質であろうがなかろうが単純化できた瞬間に思考停止する。
 単純化できないものがあった場合、それを本能的に嫌い、関与している人間が何か悪いことをして隠そうとしているからでないかと邪推する。かといって、自ら単純化のために努力する意思も能力もないので、他人の褌で相撲を取ろうとする。切り口として使いやすいもの、「法律」や業界の作る「標準」「ガイドライン」を求め、「なぜガイドラインがないのだ!」と責め立てる。それさえあれば、「〜はガイドライン違反だ」でお手軽に記事が一本作れるようになるからだ。万一その記事で問題が発生しても、悪いのはメディアではなくガイドラインの方だという逃げ道が用意され、安心して思考停止できる。
 現場の皆さんが本当にガイドラインをほしいと思っているのなら構わないが、外圧によって作らなければいけないと思っているのなら、もう一度よく考えてほしい。「ガイドラインを作れ」というメディアに騙されてはいけない。いったん作ってしまえば、現実から本質を切り出そうとする良質なメディアを駆逐し、質の低いメディアをイナゴのように招き寄せることになる。「標準化できない」ものは、そのことこそ主張すべきである。

Close