Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.36
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2007  36
臨時企画 パネルディスカッション
終末期におけるがん緩和医療のあり方を考える −標準化と多様化の狭間で−
終末期医療の決定プロセスに関するガイドラインをたどる
国立国際医療センター緩和ケア科  有賀悦子
 本年5月21日、厚生労働省から「終末期医療の決定プロセスに関するガイドラインについて」という医政局長通知(医政発第0521011号)が発出された。都道府県に、関係機関・団体等に対してこのガイドライン及び解説編を周知・指導するよう求めている。(厚労省ホームページからも閲覧可能)このパネルディスカッションは、これを受けて臨時企画として設けられたものであった。
 ガイドラインは、(1)終末期医療及びケアの在り方、(2)終末期医療及びケアの方針決定手続きから構成されおり、多専門職種の医療従事者からなる医療・ケアチームによる治療の検討、症状緩和や精神的社会的な援助などが盛り込まれている。会場では、このガイドラインと解説編が参考資料として配布された。
 昨年、高齢の担がん患者が心機能低下で入院した際、7人の子らの意見を集約し、症状緩和上苦痛の原因となっていた末梢点滴を減量、最終的には中止とし看取った症例を経験した。関わるもの全員の認識が一致し、よい看取りができたと家族からも感謝され、ガイドラインに照らし合わせてみたが遜色なかったと判断した。
 しかし、仮に8人目の子が死に際に登場し、末梢点滴すらされていないこと等を問題にした場合、ガイドラインは規範(ルール)となり司法の根拠になるかもしれない。例えば、“医学的妥当性を慎重に判断すべき”“最善の治療をとる”とあるが、本当に慎重に判断したか、本当に最善と言えるのかと問われる可能性がでてくる。
 問題なかったと感じた症例が、異なった形でこの症例が終結したとき、生じ得る問題点を会場の方々に感じていただき、次ぎの専門家へ繋いでいくことが、今回の私の役割であった。
 緩和医療に携わっている者は、今後、医療・ケアチームの一員として、終末期医療の選択支援にあたることを求められるであろう。ガイドラインは、理想的な医療の姿が書かれている。一方で、訴訟等の根拠として扱われる可能性があることを知っておくべきと思われる。我々は、患者・家族・医療者の意見が集約する方向、つまり、コンセンサスが得られる方向に進むよう、意識してチーム支援にあたることが重要であろうという結語で発表を終わった。

Close