Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.36
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2007  36
シンポジウム1
日本独自の緩和医療教育のカリキュラム開発
座長 : 高知女子大学看護学部  齋藤信也
座長・報告 : 東北大学病院緩和ケアセンター  中保利通
 平成19年6月22日(金)午前9時よりホテルグランヴィア岡山3階クリスタルの間において、「日本独自の緩和医療教育のカリキュラム開発」と題してシンポジウムが開かれた。シンポジストには筑波大学人間総合科学研究科の木澤義之氏、佐賀大学医学部附属病院の佐藤英俊氏、淀川キリスト教病院ホスピスの田村恵子氏、昭和大学医学部の高宮有介氏、そして文部科学省高等教育局医学教育課の三浦公嗣氏をお迎えした。
 木澤氏は「緩和医療の卒後教育」について全ての医療従事者を対象とするレベル1の緩和ケアの教育においてはEPEC-Oのような体系的な教育プログラムを開発し普及することが必要であり、専門家を養成するレベル2,3の緩和ケア教育では早期に専門医制度を制定することが求められると述べられた。
 佐藤氏は「緩和医療医学部教育カリキュラム」を開発するにあたって、地域・在宅でも使える内容とすること、一般医療からの継続性を大切にすることに力点をおき、多職種メンバーが分担して持ち寄るのではなく一箇所に集まって共同作業で作り上げたことを強調された。
 田村氏には看護職への教育の課題と教育カリキュラムの開発についてお話しいただいた。がん看護専門看護師、各種認定看護師が増え緩和ケアを専門とする看護師に対する教育はかなり進んでいるものの、一般病棟で勤務する看護師対象の教育は必ずしも十分とはいえない点を指摘された。さらに看護実践能力が高まるように看護学部教育を充実させること、緩和ケアナース養成研修の利用、看護職の中だけでなくチームの中での役割を発揮できるような教育カリキュラムの開発について言及された。
 高宮氏は「医学生に対する緩和ケア教育の試み」ということで、ロールプレイを利用したチュートリアルで漠然とした考えを言語化させ全人的な痛みを理解させたり、医師以外の職種の講師が語る死にまつわる事柄を通じていのちを考える手がかりとするなど、昭和大学での様々な斬新な取り組みについて紹介された。
 三浦氏は文科省の医学教育課課長という立場から、緩和医療がさらに身近なものになるための土台作りともいえる取り組みについて話された。具体的には、がん対策基本法成立をうけ医学教育モデル・コア・カリキュラムに緩和ケアが新規に盛り込まれるようになったこと、がんプロフェッショナル養成プランでは14億円を使って医師及び他の医療従事者に対する緩和ケア教育を底上げ充実させる公募を行っていることが話題となった。また「緩和ケアは地域ケアの一環として提供されるべきである」とご自身が厚労省で介護保険制度の実施推進に関わられたり、広島県で緩和ケア病棟立ち上げに直接関与されたご経歴ならではの発言もなされた。
 フロアからは、学生教育で何を伝えるのか、完璧な回答の出せない問いにどう答えていくのかという質問をはじめとして、痛み治療の教育について、看護スペシャリスト養成機関の偏在の問題などに関する質問があり、シンポジストの先生方がそれぞれ経験に基づいた深い自論を述べられた。時間さえ許せばさらに突っ込んだやりとりを望んだ参加者も多かったであろうが、日本における緩和医療教育のカリキュラムを開発してゆくにあたって押えるべきポイントが短時間の中で浮き彫りになったシンポジウムであったと思う。

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