Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.35
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2007  35
Journal Club
ICUで死にいく患者の家族へのコミュニケーション法と小冊子について
山口大学大学院医学系研究科医療環境学  谷田憲俊
Lautrette A, Darmon M, Megarbane B, et al. A communication strategy and brochure for relatives of patients dying in the ICU. N Engl J Med 2007;356:469-478.

【背景】
 ICUで死にいく患者の家族には緊密なコミュニケーションが必要である。我々は終末期の先行的協議と小冊子を含む方式の悲嘆を軽減する効果について検討した。
【方法】
 フランスの22のICUにおいて126名の死にいく患者の家族メンバーを無作為に介入方式と慣習的協議群に分けた。患者選択基準は19歳以上、数日後に死亡すると予測された者である。対照群には、それぞれのICUが行っている通常の終末期協議を含む対応がなされた。介入群の終末期の先行的協議はワシントン大学で開発された指針に基づきVALUEと呼ばれる医療者が「家族の言うことを尊重し認める」「家族の感情を承認し」「傾聴し」「医療者は介護者が患者を人として理解することを許容する質問をし」「家族からの質問を引き出す」5つの目的をもって行われる。また、介入群には、死別と儀式、悲嘆と悲嘆反応などについて主に時系列的に記した小冊子が渡される。参加者は患者の死の90日後に、出来事衝撃度尺度(IES、点数は無症状を示す0から外傷後ストレス障害[PTSD]関連の重症を示す75点)と病院不安抑うつ尺度(HADS、点数は苦悩なしを示す0から最大の苦悩を示す21まで)を用いて電話インタビューで評価を受けた。
【結果】
 介入群の参加者は対照群より長い協議時間を持ち(中位30分対20分[第1第3四分位幅19〜45分]、P<0.001)、対話により長い時間を使った(中位14分[第1第3四分位幅8〜20分]対5分[第1第3四分位幅5〜10分])。90日目において、電話インタビューに応じた介入群の56名は対照群の52名に比して有意に低い中位IES点数(27対39、P=0.02)及び低いPTSD関連症状(45% 対69%、P=0.01)を持った。中位HADS点数はまた介入群で対照群より低かった(11対17、P=0.004)、そして不安と抑うつの双方とも低頻度であった(不安45% 対67%、P=0.02、抑うつ29% 対56%、P=0.003)。
【結論】
 ICUにおいて死にいく患者の家族に悲嘆に関する小冊子と終末期の先行的協議方式という長い協議と対話を増す機会を提供することは悲嘆の苦悩を軽減するであろう。
【コメント】
 急性疾患患者も緩和ケアを、患者が死亡した場合は彼らの家族も悲嘆ケアを必要としている。欧米では、それを認識した緩和ケア・スタッフがICU患者と家族に対する協力を始めている。本研究も、緩和ケア・スタッフの経験が一般の患者・家族にも役に立つことを示している。

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