Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.35
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2007  35
Current Insight
終末期がん患者のspiritual well-beingに及ぼすライフレビューインタビュー
聖マリア学院大学看護学部  安藤満代
久留米大学文学部  津田 彰
聖隷三方原病院緩和支持治療科  森田達也
【背景と目的】
  回想療法の一つであるライフレビューインタビューに関する研究において、終末期のがん患者を対象とした実証的な研究は極めて少ないが、患者が人生を回想することは臨床でもしばしばみられることから、この療法の実証的な効果を明らかにする必要があると考えられた。そこで、本研究では、1)終末期がん患者のspiritual well-beingに及ぼすライフレビューインタビューの介入効果を評価し、2)介入の効果がある患者と、そうでない患者の背景を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 日本の緩和ケア病棟に入院中の12名の患者に対して、発達段階ごとに人生を回想する構造的ライフレビューを臨床心理士が行った。面接前後に6つの下位尺度から成るSELT-MというQOLを測定するスケールに、各項目に対して1点〜5点で回答するよう求めた後、週に1回、約30分から1時間の面接を、平均4回実施した。介入前後のSELT-Mの得点差を中央値によって高群と低群に分け、語りの中で意味がある文章を分析対象としてテキストマイニングというPCソフトを用いて質的分析を行った。
【結果】
 SELT-Mの下位尺度であるspiritual well-beingの得点は2.57±0.61から 3.58±1.0に上昇し、SELT-Mの総合得点の平均値は2.57±0.61から3.14±2.25に上昇した。面接前後のSELT-Mの得点差が高かった群の語りから抽出された要因は、「肯定的な人生観」、「日々の生活での喜びと良好な人間関係」、「人生に対するバランスのとれた評価」であった。一方、面接前後のSELT-Mの得点差が低かった群の語りから抽出された要因は、「病気に起因する将来の心配」、「家族関係での葛藤」、「遺産やお墓などの現実的な問題への直面」であった。
【考察】
 これらの結果から、ライフレビューインタビューは終末期がん患者のspiritual well-beingを向上させる可能性があること、この介入で効果を決定する要因としては、患者が肯定的な人生観をもち、良好な人間関係を保ち、日々の生活での喜びを持っていること、人生に対して肯定的な側面と否定的な側面をバランスよく評価することといえる。一方、効果が得られない要因としては、病気に起因する将来の心配があり、家族関係での葛藤を持っていること、現実的な問題に直面していること、などであると考えられる。参加者の急変によって面接が中止となる場合が多く、新たな面接方法を開発する問題が今後の課題として残された。(出典:Ando, M, Tsuda, A, & Morita, T. (2007) Life review interviews on the spiritual well-being of terminally ill cancer patients . Supportive Care in Cancer, 15(2), 225-231)
 現在、ライフレビューインタビューを用いた無作為化比較試験の研究を実施する予定です。また、看護師を対象としたトレーニングも企画(第3次対がん10か年総合戦略研究事業「QOL向上のための各種患者支援プログラムの開発研究」班)していますので、ライフレビューインタビューに興味のある方は御連絡いただければと思います。

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