Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.35
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2007  35
巻頭言
緩和医療の広がりをめざして
広島県緩和ケア支援センター  本家好文
 1996年7月に日本緩和医療学会が発足して、10年余りが経ちました。学会発足当時にも緩和医療は実践されていましたが、決して十分とは言えず、緩和医療学として確立されていませんでした。その後の10年間で、わが国の緩和医療を取り巻く状況は大きく変化しました。疼痛治療ひとつを考えてみても、使用できるオピオイド製剤の選択肢が増え、鎮痛補助薬に関する使用経験も蓄積されて、質の良い疼痛治療が可能になりました。
 10年を迎えた本学会は、昨年12月に特定非営利活動法人(NPO)の認証を受けて大きな転換期を迎えています。会員数も4月現在で5400名を越えて、最近の3年間で倍増しました。会員数の急速な増加には、さまざまな社会的な動きが影響しています。そのひとつは、本年4月から国策として緩和医療を含めたがん医療を推進するために「がん対策基本法」が施行されたことがあります。また、がん医療の地域格差是正を目的とした「がん診療連携拠点病院」が整備され、がん医療の「均てん化」を目指す動きが本格化したことも考えられます。「がん診療連携拠点病院」の緩和ケアチーム設置は、緩和医療が一般病院内に広がりを見せる動きを加速すると考えられます。
 また「在宅療養支援診療所」「療養通所介護」といった在宅緩和ケアを推進する動きや地域連携促進の動きは、地域医療を担う診療所医師、訪問看護師、薬局薬剤師といった人達が、緩和医療に関心を寄せるきっかけになっています
 このように緩和医療を広げるための枠組みは着実に整備されていますが、緩和医療を提供する人達への教育は、決して十分とは言えません。今後は「がん診療連携拠点病院」を中心とした地域連携や緩和医療に関する研修会の開催や、本学会が開催する教育セミナー、症状緩和のためのガイドライン作成、教育プログラムの整備などを進めながら、「教育研修内容の均てん化」も目指す必要があります。
 本学会の特色として、学会構成メンバーが多職種にわたっていることがあげられます。緩和医療では患者の苦痛を解放することを目指し、多職種スタッフがお互いの専門性を尊重しながら恊働することが求められます。さまざまな職種の会員が協力してチーム医療の基盤を築くとともに、患者を中心とした臨床現場の問題解決に結びつく学会であることが大切だと考えています。

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