Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.34
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2007  34
Journal Club
緩和ケア研究に対するホスピス患者の考え
山口大学大学院医学系研究科医療環境学  谷田憲俊
Terry W, Olson LG, Ravenscroft P, et al. Hospice patients' views on research in palliative care. Intern Med J 2006;36:406-413.

【はじめに】
 より良い緩和ケアの推進には、緩和ケアに関する研究が必要となる。中でも臨床研究には、その対象患者の参加が必須である。しかし、終末期患者は致死が間近であるため、“研究”であることを理解しないまま誤った望みから研究参加にせき立てられるとされる。したがって、インフォームド・コンセントが適切でないので、終末期患者を対象とする臨床研究は倫理的に問題あるとされる。この論文は、死にいく患者自身がどのように考えているのか調査した質的研究の結果である。
【方法】
 20床のマーシー・ホスピス(オーストラリア)の入院患者を対象とし、半構造的面接を行った。参加を打診された22人に1日後に諾否を尋ねたところ、全員が本研究へ参加を了承した。18人が進行がん患者で、13人が女性、年齢は28〜93歳であった。面接から死までの期間は、1日が5人、2日が9人、他は1〜5週間であった。面接は1人(WT)が行い、患者1人あたり19〜74分(中位40分)で、面接を録音し後の分析に用いた。面接は構造的質問にオープンな応えを追加できるように、緩和医療における研究課題全般に及ぶ質問を行った。
【結果】
 全ての患者は、打診されれば臨床研究への参加を希望するとした。主に挙げられた理由は、「自己犠牲」「個人の価値が高められるという思い」「自律の達成感」「研究により緩和ケアが改善することの期待」であった。彼らは、彼らの自己決定は自律に基づいたものではないという指摘を拒否し、同意の有効性を主張した。
【結論】
 調査した限りでは、倫理関係者が倫理的問題としたことに患者は同意しなかった。患者の視点は、専門家たちのコンセンサス(終末期患者を臨床研究から除外する)に反映されていないことが明らかとなった。
【コメント】
 かつて、死にいく患者は人体実験の材料とされた。その罪悪感からか、終末期患者に対する研究はタブー視されている。しかし、タブー視すること自体が人権に反する行為である。終末期患者の人権侵害の可能性は研究課題にもよるであろうし、適切な臨床研究が行える体制を整えることが必要と思う。

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