Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.34
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2007  34
巻頭言
新年度にむけての緩和医療の動向について
国立がんセンター中央病院手術部  下山直人
 平成18年6月にがん対策基本法案が国会を通過し、本年の4月より施行されることが決まったことは緩和ケアに携わる医療者にとって画期的な出来事であると考えている。しかし、臨床の現場への反映は少し時間がかかるように思えるし、成立後の行政や当学会の動きに関しても認識されていない医療者は多いと思う。本稿では今後緩和医療学会がどのような役割を果たすべきかについて意見を述べたいと思う。また、筆者の所属する国立がんセンターが緩和医療の中で果たそうとしている役割についても付け加えたい。

がん対策情報センター
 平成18年10月より、国立がんセンターの築地キャンパスにがん対策情報センターが設立された。詳細はホームページ(http://ganjoho.ncc.go.jp/top.html)を参照されたいが、がん対策基本法をうけてその理念の実践を行うことが目的となっている。がんに関する予防、早期発見、治療、研究、教育、緩和ケアについてすべての情報を発信し、双方向の情報伝達が行われることが実際の目標である。平成18年12月より、本学会の評議員である元北里大学の的場元弘先生が、その他のがん情報だけでなく緩和ケアに関する情報発信の中心となってすでに活動を開始しており、同じ学会員として、同僚としてサポートしていきたいと考えている。国の緩和ケアに関する施策は、このセンターと全国のがん診療連携拠点病院との連携によって均てん化されるように目標が定められている。NPO法人化し公的な役割が明確となった本学会と国の施設との連携は極めて重要であると考えている。

緩和ケアに関する研究の推進
 厚生労働省のホームページをみると平成18年度の公募も含め、平成19年度においてもこれまでになく多くの厚生労働省科学研究費研究班の公募が行われている。これもおそらく基本法の施行を見据えてのことと思われるが、公募要項をみても、緩和ケアガイドラインの作成、緩和ケアの教育の向上、QOLの向上・支持療法の向上に関する研究などが銘記され、緩和ケアの向上にむけての研究推進が盛り込まれている。また国の施策としての戦略研究の公募には、はじめて緩和ケアに関する研究が公募された。緩和ケアが末期医療と同義語で使われてきた時代では、研究という言葉は馴染みにくく、実際に臨床に関するインパクトの高い研究は少なかったことは自分も含め反省すべきことと思われるが、今回の法案を受けて早期の、がんの治療と並行して行われる緩和ケア、支持療法という観点での研究の推進に対しては緩和医療学会の力が必要であると考えている。この研究の中にも多くの学会員が参加・協力し、学会の中でいまだに結実していない部分も、学会の中ですでに行われている部分も含めて国の施策に取り入れられるような研究を行っていかなければならないと思う。

教育の発展にむけて
 看護師、薬剤師に関しては、すでに緩和ケアにある程度特化した認定制度が作られているが、医師に関してはまだ先が見えない状況にある。現状での緩和ケア医の要件は不明瞭であり、最低限の教育レベル(minimum requirement)の設定のために認定医制度の設立は急務であると思われる。そのための医師分科会の設立や、緩和ケア医への入り口となる各学会(日本麻酔科学会、日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会など)相互での認定医制度に向けての議論が必要ではないかと考えている。緩和ケアの教育、均てん化は国の施策に合致しており、教育プログラムを作成しがん診療連携拠点病院を介した均てん化は先に記した研究班の目標となっているため、ここ3年での具体的な成果に期待したい。研究会、講習会ももちろん重要な方法であると考えている。

臨床での実際の問題
 緩和ケアの将来は上述した研究などによって明るいと考えているが、実際の緩和ケアの臨床現場では多くの問題が山積している。筆者自身は、保健医療・介護保険対策委員として現場での状況を把握し委員会での検討をはじめようとしているところである。2年後の改訂にむけて声が寄せられているのは、リンパ浮腫に対するマッサージ療法の診療加算、在宅医療においての介護保険との関連に関する問題、緩和ケアチーム加算、などである。緩和ケアチーム加算の要件に関しては、今後とも緩和ケアチーム検討委員会での議論を含め折衝を行っていく必要があると思われるが、前2者に関しては関連学会と連携し現場の声を反映したものにしていかなければならないと考えている。ケタミンの麻薬指定、保険適応外の薬剤の使用に関しても本学会を主導とした研究チームの発足が急務であると考えている。緩和ケアの発展の中で、診療加算に関するもの、教育に関する問題は、公的な、NPOのような組織が国と連携し行っていくことが必要であると考えている。
もともと保険に関しては不勉強な部分が多く、委員の方々、学会員のご指導をうけながら、多くの声に耳を傾けていきたいと考えている。今後ともよろしくお願いたします。

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