Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.33
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2006  33
施設訪問記
独立行政法人国立病院機構 西群馬病院緩和ケア病棟
千葉県がんセンター整形外科  安部能成
 群馬県は海に囲まれた日本列島の中にあって、山また山の風景が続く土地柄である。西群馬病院はJR東日本上越線渋川駅からバスで坂道を25分ばかり登った、山の斜面を利用して建てられていた。
 1993年6月に開棟された建物はゆったりとした造りであるが、その余裕は各病室のトイレ周りの、介護を可能にする空間設定に現れていた。幅広の廊下もそうであるが、広い窓から故郷の山々を眺めて過す、そういう生活空間が設計されている。ここには百種類の野鳥が訪れるという。鳥の餌台があり、双眼鏡も置いてあることから見て、利用者には鳥好きが多いようである。実際、ある心理学的調査によると、この病棟の利用者の会話には、自然に関するものが多く聞かれるのだそうだ。山岳的自然に恵まれた西群馬病院内は斜面が多く、各々の病棟を結ぶスロープを行動できない人は、エレベータを利用する必要がある。そのためか、本病棟には外泊などの際、直接外部に出られる、屋根付の西玄関も用意されていた。
 23床という病床規模は、日本のホスピス緩和ケア病棟において標準的な大きさであるが、4床室が1つ、3床室が2つ、個室が13室で構成されている。このような部屋割りは、病棟設置の際に聴取した、利用者の声を反映されたものだという。つまり、選択肢の問題である。個室に入りたい人もあり、大部屋で他人と一緒の方が寂しくない、という意見もあったのだそうだ。
 緩和ケア病棟は正面入り口から中央を貫く廊下を挟んで病室が並ぶ。中央廊下の中程からテラスに向かってもう一つの廊下があり、全体はT字型になる。真ん中に浴室やナース・ステーションが設定され、その前には円形のソファーが背を向けるように置かれている。先ごろ行われた建築学的調査によると、この場所が、病棟内で最も患者さんの心が落ち着く場所であるという。見守られているが、離れている、という、この距離感が大切なのであろう。
 風呂好きな日本人を反映して、家族(一般)浴室と介助浴室の2種類が設けられていた。入浴の需要は多く、特に女性は毎日、髪を洗いたいとの要望がある、そうである。そのためか病室には風呂がなく、歩ける人は一般浴に、歩けなくなったら介助浴、という対応になっている。
 職員構成は、専従医師2名、看護師17名、看護助手2名、兼任スタッフの医療ソーシャルワーカー、栄養士、薬剤師である。御案内くださった院長の斎藤先生によれば、次の課題はリハビリテーションであるとのこと。22名のボランティア諸氏による手入れの良い植物にも取り囲まれた本病棟は、院外からの紹介率60%、在棟期間の中央値が42日である(病院概況書による)。風光明媚な自然環境を望まれる方には、ご推薦の施設だと思われた。

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