Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.33
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2006  33
学会印象記
第12回 大学病院の緩和ケアを考える会 総会・研究会
千葉県がんセンター整形外科  安部能成
 2006年9月16日、東京の順天堂大学有山記念講堂において、第12回大学病院の緩和ケアを考える会が「がん患者さんのQOL向上を目指して」をテーマに開催された。これに参加する機会を得たので、ご報告申し上げたい。
 高宮有介代表世話人の開会挨拶を皮切りに、シンポジウム「骨転移のある患者へのチームアプローチ」、総会、ワークショップ「がん治療中止からの患者・家族へのサポーティブケア」、コメンテーターによる指定発言、と続き、閉会に至る構成となっていた。
シンポジウムでは、昭和大学の高宮有介先生、東海大学の田中光先生を司会に、いずれも順天堂大学からシンポジストが登壇。長岡正範リハビリテーション科医師は、がん患者のリハビリテーション・ニーズの増大を話された。唐澤久美子放射線科医師は、骨転移の放射線療法が対症的照射の典型であり、痛みは緩和できても骨強化にはならないことを指摘された。井関雅子緩和ケアチーム医師は、特に脊椎転移症例は退院に難渋することが多い、と臨床的苦心を披瀝された。北原エリ子理学療法士は、年間50例を超える骨転移を有する患者の存在を指摘した上で、その理学療法の実際を示された。秋山真紀看護師は、骨転移による下半身麻痺で入院し、放射線治療中の症例を用いて、看護師が一番患者の身近にあるからこそ、他の職種との関わりを積極的に持つべきである、との発表があった。今回は、大学病院では取り上げられることの少ない、骨転移を持つがん患者に対する複数職種の臨床介入をテーマにした多角的検討であり、フロアからの発言も活発になされたことから、一定の成果をあげたと思われる。
 ワークショップでは、司会に横浜市立大学の斉藤真理先生、順天堂大学の寺尾泰久先生、発表者に神奈川県ガンセンターの奥野滋子緩和ケア病棟医師、日本大学付属板橋病院の藤田智子緩和ケアチーム看護師、国立がんセンター中央病院の御牧由子医療ソーシャルワーカーを迎えた。奥野医師は、主治医と緩和スタッフの緊密な連絡により、緩和医療への移行を拒否していた患者が、次第に緩和スタッフとの関わりを持てるようになった経過を話された。藤田看護師は、患者・家族が緩和ケアを理解しないまま転院した症例と、患者の希望通り、妻も納得して在宅療養に移行できた症例を対比的に示された。御牧ソーシャルワーカーは、患者・家族の全人的ケアを行うためには、院内の緩和ケアチームだけでは不充分であり、地域の関係機関にまで繋ぐことの重要性を指摘された。
 コメンテーターの宮崎東洋順天堂大学名誉教授は、35年間に及ぶ大学生活の経験を踏まえ、緩和医療の展開には、医者を変えようとしても時間がかかりすぎて無駄が多いので、ナースが患者・家族を励まして、医師に働きかけることの大切さを指摘された。
 土曜日の午後にもかかわらず、広い講堂が満席になるほどの盛況であったことをお伝えしたい。次回は、東京大学での開催が予定されている。

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