Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.33
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2006  33
指定演題3
「ケアのピットホール3」せん妄の対応を考える
演者 : 名古屋市立大学  明智龍男
広島大学病院  槙埜良江
座長・報告 : 大津市民病院 緩和ケア科 精神・心療内科部長  津田 真
 ケアのピットホール3はせん妄の対応を考えるとして名古屋市立大学精神・認知・行動医学分野助教授の明智龍男先生と広島大学病院がん看護専門看護師の槙埜良江先生に講演いただいた。
 明智先生は、「せん妄に対する医学的マネジメント」として、せん妄は軽度から中等度の意識混濁に、幻覚、興奮などのさまざまな精神症状を伴う意識障害であり、術後の30−40%、高齢入院患者の10−40%、終末期患者の30−90%にみられること、マネジメントにはせん妄の発生要因を検討し、治療可能な要因に対してオピオイドローテーションのように個別的な対応、および抗精神病薬の投与が推奨されていることを紹介して下さった。先生の調査結果でも薬物療法についての誤解があり、ちょうどフロアからの質問に対して、不眠だけには睡眠薬の対応でよいが、せん妄の前駆症状があれば抗精神病薬がよいとの回答は大変参考になったのではないかと思う。
 槙埜先生は「看護の視点からがん患者のせん妄の対応を考える−せん妄の予測のための観察・患者ケア・家族ケア−」として、せん妄の対応はがん看護の重要な症状マネジメントであると同時に、看護がせん妄の始まりを発見することが多い立場にいることから、発症を予測する観察やケアの手法の確立の必要性を述べられた。そして、発症の要因をLipowskiの直接原因(疾病、薬物など)、誘発因子(環境、心理など)、準備因子(加齢など)の3要素の整理から発展させて、誘発因子のなかで、とくに患者自身の予後や身辺整理などの個別的な「気がかり」が発症を強める可能性について、症例を挙げて説明された。
 質疑応答では、大切な人がせん妄になった家族は「気が狂ったのではないか」との強い不安が生じるため、事前の家族教育や発症後のケアの重要性について、理解を深めることができた。また、せん妄の際の拘束についても、「拘束をするしないに関するリスクベネフィットと目指しているゴールを検討する必要がある」(明智先生)、「抑制することになった理由と目標を再検討することが大切」(槙埜先生)とのアドバイスをいただいた。お二人の話を通して、せん妄の観察のポイント、評価、介入方法について整理ができたと同時に、現時点での対処の限界についても理解することができた。コントロール困難な多くの事態に直面する我々にとって、今一度、何が大切なのかを再確認できた時間だったのではないかと思う。

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