Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.33
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2006  33
会長講演
ケアのパワー
演者 : 兵庫県立大学 看護学部  内布敦子
座長・報告 : 金城学院大学  柏木哲夫
 第11回日本緩和医療学会における内布敦子先生の会長講演、「ケアのパワー」は、その題名通り、パワーあふれるすばらしいものであった。1996年にこの学会を立ち上げた時、いつか看護職の人が会長を務めてほしいと願っていた。11年目にそれが実現したことは本当にうれしいことである。昔話で恐縮であるが、学会立ち上げの時、緩和医学会にするか緩和ケア学会にするか議論があった。前者だと医師中心になるし、後者だとナース中心になる。結論的には中をとって、緩和医療学会で落ち着いた。
 本題の会長講演であるが、結論的に言うと、ケアはパワーを生むということである。ケアを通して、患者さんにパワーが生まれる。それと同時にケア提供者にパワーが生まれる。ミルトン・メイヤロフのいう、「ケアの双方向性」である。内布先生は講演の中で、長年の臨床経験と看護研究で身に付いたことを、ご自分の言葉で語られた。例えば、「ケアリングは気づかいである」という表現はその典型である。いかなる対処においても、その本質的な前提になるのは気づかいであろう。
 講演の中で紹介された多くの事例は貴重なものだ。患者の態度や言葉の中から、ケアの本質に関係する要素を引き出し、洞察を深めていくプロセスがすばらしい。例えば、前立腺がんの再発で痛みがひどい60代の患者が、痛み体験の共有と適切な処方による除痛により、「手元になかった身体」から「手元にある身体」へと変化し、それに伴って、パワーを獲得していった様子をまとめた事例報告は、まさにケアのパワーの典型である。
 私事で恐縮だが、阪大人間科学部に在籍していた時、内布先生の博士論文の主査を務めさせていただいた。死を語り合うことを妨げるバリアーに関する研究であったが、論文作成のプロセスにおける先生のパワーに感心したことを懐かしく思い出す。ますますお元気で臨床、教育、研究にご活躍されることを祈っている。

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