Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.32
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2006  32
Journal Club
病院外で管理される深刻ながん性疼痛を伴う患者の皮下ポートシステムによる髄腔内留置カテーテル:感染の危険性
名古屋市立大学看護学部  石黒千映子
Holmfred A, et al.: Intrathecal catheters with subcutaneous port systems in patients with severe cancer-related pain managed out of hospital: the risk of infection. J Pain Symptom Manage. 31(6), 568-72(2006).

【はじめに】髄腔(クモ膜下ないしは硬膜下)内留置カテーテルは、従来の治療法に抵抗を示す深刻な疼痛治療に用いられ、ここ10年間で紹介されたカテーテル挿入の新技術と新モデルのカテーテルは、在宅環境での使用を可能にした。我々は、ホスピスまたは在宅環境におけるカテーテルの挿入とケアの衛生面での改善が、標準的な徐痛のレジメンによって管理できない慢性の深刻ながん性疼痛を伴う患者のカテーテル関連の感染発症率を低減するかどうかについて、カテーテル挿入の方法と挿入後のケアに焦点を当てて調査した。
【対象と方法】対象は、(1)ペインクリニックを紹介された、(2)従来の疼痛治療では治療できない、(3)髄腔内カテーテル挿入の基準を満たしている、(4)緩和ケアのみを受けている、患者である。患者は、カテーテル挿入の数日前に、カテーテルを用いた疼痛管理について口頭および紙面で情報提供を受けた。挿入の前日、抗生剤の予防投与が必要か否かを検討し、当日の朝に血液検査(CRP、WBCなど)を実施した。抗生剤の予防投与が決定された場合、カテーテル挿入の2時間前にclindamycinもしくはdicloxacillinの経口投与または静脈内注入を行った。カテーテル(ポートシステム)は、通常の治療室で手順に従って挿入され、ポート針と薬剤コンテナは1回/週、交換された。挿入後の評価は、(1)抗生剤の投与および投与期間、投与の理由の記録(診察時)、(2)ペインクリニックの看護師による、皮下トンネルの部位、ポート針刺入部、ポート部の感染徴候の観察(挿入後2週間は毎日)によってなされた。
【結果】55人(男性23人、女性30人、平均年齢59.5歳、平均治療期間100.58日、平均入院期間22日)が調査された。挿入前に抗生剤の予防投与を受けたのは6人であった。挿入後に感染を認めたのは4人で、うち1人はカテーテル挿入168日後に硬膜外膿瘍と診断され、カテーテルを抜去した。ほかの3人はポート部の皮膚に感染が疑われ、そのうち2人は抗生剤を投与されたが、もう1人はカテーテルを抜去した(この患者は、後で腫瘍の転移によるものと判断された)。
【結論】1年間の追跡調査の結果、抗生剤の予防投与はせず、衛生的な原則によって非常に低いカテーテル関連の感染率にとどめることができた。おそらく、硬膜外膿瘍は放射線治療が影響しており、局所感染は薬剤コンテナの交換の手技的な問題によるであろう。また、これらの感染は、カテーテル挿入後2週間以上経過してから起きているように思われる。以上から、無菌的な技術を用いれば抗生剤の予防投与は不要であり、在宅環境において、長期間にわたって疼痛マネージメントシステムを管理することが可能であると思われる。
【コメント】適切な疼痛マネージメントを行うためには感染防止にも留意することが必要であり、挿入時のみならず、留置中の清潔捜査の徹底と丁寧な観察が欠かせないと言えよう。

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