Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.32
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2006  32
Journal Club
死亡場所の選好に関連する要因
−南オーストラリアの一般集団を対象とした調査から−
東京大学大学院 医学系研究科成人看護学/緩和ケア看護学分野  三條真紀子
Factors predictive of preferred place of death in the general population of South Australia
Foreman LM, Hunt RW, Luke CG, Roder DM.
Palliative Medicine 2006; 20: 447-453

【目的】一般集団の死亡場所の療養場所の選好に関連する要因を知る。
【方法】南オーストラリアで、ランダムサンプリングした15歳以上の一般集団3015名に対して対面面接調査を行った。調査項目として、死亡場所の選好と性、年齢、婚姻、居住地域と居住歴、収入、SF36、在宅療養の気がかりや「尊厳のある死」についての考え、終末期の意思決定(リビングウィル,代理決定)に関する知識などを聴取した。解析対象は死亡場所の選好を示した2652名とした。
【結果】2652名中、30歳以下が23%、70歳以上は14%、性別は男性が48%であった。死亡場所として在宅を希望するものが70%、病院が12%、ホスピスが10%、ナーシングホームが1%であった。多変量解析の結果、在宅死に比べ、施設死を希望することの関連要因として30歳以上、女性、在宅療養での家族の負担に関する懸念があること、リビングウィルの知識があること、SF36で身体的健康感が低いこと、精神的健康感が高いことが示された。また、施設死を希望するもののうち、病院死よりもホスピス死を希望することの関連要因として、高齢、女性、独身、都会在住、高学歴、就業していること、高収入、苦痛がないことを尊厳のある死と考えること、リビングウィルの知識があることが示された。本研究の対象集団の選好を、実際のがん死の性・年齢分布を参考に重み付けした結果、死亡場所として在宅を希望するものは58%、病院が28%、ホスピスが12%、ナーシングホームが2%と推定された。実際の死亡場所は在宅が14%、病院が56%、ホスピスが18%、ナーシングホームが12%であり、希望する療養場所と実際の死亡場所の間には乖離があることが示された。
【考察】身体的QOLが低いことや在宅療養への懸念があるものが施設死を希望したが、この結果は在宅療養の現実や困難をより理解しているためであると考えられた。施設での療養環境を整え、終末期患者のニーズを満たしていく一方で、在宅療養を望む場合の障害を克服すべく努力していく必要があるだろう。
【コメント】平成15年の厚生労働省による意識調査の結果から、わが国においても希望する死亡場所と実際の死亡場所との間には乖離があることが示されている。本論文でも示されているように、病気の進行によって終末期の選好がどのように変化するのか、そして、選好が達成されない場合、その障害は何かを明らかにすることが望まれるだろう。

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