Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.32
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2006  32
Journal Club
EORTC QLQ-C15-PALの開発:
緩和ケアを受けるがん患者用の短縮版QOL尺度
東京大学大学院医学系研究科成人看護学/緩和ケア看護学  佐藤一樹
EORTC QLQ-C15-PALの開発:緩和ケアを受けるがん患者用の短縮版QOL尺度
M. Groenvold, M. A. Petersen, N. K. Aaronson, et al. The development of the EORTC QLQ-C15-PAL: a shortened questionnaire for cancer patients in palliative care. Eur J Cancer. 2006; 42: 55-64.
項目応答理論(IRT)を用いたEORTC QLQ-C30 情緒機能下位尺度の短縮版開発
J. B. Bjorner, M. A. Petersen, M. Groenvold, et al. Use of item response theory to develop a shortened version of the EORTC QLQ-C30 emotional functioning scale. Qual Life Res. 2004; 13: 1683-97.

【目的】がん領域で広く使用されているQOL尺度であるEORTC QLQ-C30を短縮し、緩和ケアを受けるがん患者に適用できるQOL尺度を開発する。
【方法】EORTC QLQ-C30(version 3.0)は30項目から成り、機能の5尺度(身体、役割、認知、情緒、社会生活)、症状の3尺度(疲労感、疼痛、嘔気/嘔吐)と6単一項目(呼吸困難、不眠、食欲不振、便秘、下痢、経済的困難)、全般的QOLの1尺度を含む。EORTC QOLグループがこれまでに行った24調査のがん患者データ(N=8242)を再解析し、項目応答理論(IRT)を用いて多項目から成る尺度を短縮した。また、緩和ケアを受けている患者41名と緩和ケアを専門とする医療者66名にインタビューを行い、30項目それぞれの評価項目としての重要性と回答者への心的影響を考えての適切性、重要性の高い上位10項目、30項目以外に追加すべき項目を尋ねた。
【結果】身体機能の5項目は、IRTとインタビューから3項目に短縮した。情緒機能の4項目は、IRTから2項目に短縮した。疲労感の3項目は、IRTから2項目に短縮した。嘔気/嘔吐の2項目は、重要性とIRTから1項目に短縮した。疼痛の2項目は、IRTで短縮できず、2項目とも重要性が高く回答され、そのまま残した。症状の6単一項目のうち呼吸困難、不眠、食欲不振、便秘の項目は、重要性・適切性がともに高く、そのまま残した。全般的QOLの2項目は、重要性・適切性の高い1項目に短縮した。役割・認知・社会生活機能、下痢・経済的困難の項目は、重要性や適切性の観点から削除した。
【結論】EORTC QLQ-C30を短縮し、緩和ケアを受けるがん患者に適用できる15項目から成るQOL尺度EORTC QLQ-C15-PALが開発された。
【EORTC QLQ-C15-PALの15項目】(日本語訳はEORTC QLQ-C30日本語版より抜粋)
1.屋外の短い距離を歩くことに支障がありますか。
2.一日中ベッドやイスで過ごさなければなりませんか。
3.食べること、衣類を着ること、顔や体を洗うこと、便所に行くことに人の手を借りる必要はありますか。
この一週間について
4.息切れがありましたか。
5.痛みがありましたか。
6.睡眠に支障がありましたか。
7.体力が弱くなったと感じましたか。
8.食欲がないと感じましたか。
9.吐き気がありましたか。
10.便秘がありましたか。
11.疲れていましたか。
12.痛みがあなたの日々の活動のさまたげになりましたか。
13.緊張した気分でしたか。
14.落ち込んだ気分でしたか。
15.この一週間、あなたの全体的な生活内容は質的にどの程度だったでしょうか。
【コメント】緩和ケアの質向上のためには緩和ケアの評価が必要である。終末期患者が自記式の調査票に回答することは困難であることが多く、評価尺度は簡便であることが求められる。がん患者用のQOL尺度の短縮版であるEORTC QLQ-C15-PALは、緩和ケアを受けるがん患者用のQOL尺度として普及する可能性がある。

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