Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.32
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2006  32
教育講演3
褥瘡のケアについて考える
演者 : 静岡県立静岡がんセンター  青木和恵
座長・報告 : 大阪大学医学部附属病院  田墨恵子
 第11回緩和医療学会の教育講演では「褥瘡ケア」がとりあげられ、がん医療の現場でWOC認定看護師として活躍中の青木先生により「褥瘡ケアから緩和ケアとしての褥瘡ケアへ」という講演が行われた。終末期がん患者の褥瘡は悪液質、疼痛、呼吸困難、倦怠感などの内的な要因と、便失禁による汚染やせん妄の体動による摩擦などの外的な要因で起こるが、これらはつまり終末期がんの症状であり、取り除くのは不可能な場合が多く、そのことが終末期がん患者の褥瘡の予防、治癒を困難にしていると述べられた。青木先生はすでに2000年頃より、終末期がんと密接に関係のある褥瘡という視点から、この状況を「がん性褥瘡」と表現されている。がん性褥瘡が確かに存在するという根拠として、褥瘡患者管理加算導入後も終末期がん患者の褥瘡発生は、一般の疾患に比べ減少していない状況を提示された。また、ご自身が活動する静岡がんセンターは、7:1の看護師配置という充実したバックグランドを持つにも関わらず、緩和ケア病棟では褥瘡の保有率が10%以上であるという現状をとりあげ、終末期がん患者の褥瘡を減少させることは困難であると結論づけられた。したがって、緩和ケアのひとつとして褥瘡ケアの確立することが必要であることを述べられ、先生の考えをアルゴリズムとして示された。その中で、褥瘡の発生要因となる終末期がんの症状が緩和できない場合には、褥瘡の治癒ではなく感染予防を第1の目標とし、次に褥瘡の症状と褥瘡ケアによる苦痛を最低限に抑える方法を考えることが必要であると述べられた。これに伴って家族の納得とチームの合意、記録を残すことが必須であると強調された。最後に先生は、緩和ケアとしての褥瘡ケアの確立が必要であるが、しかしそのために苦痛の強い終末期のがん患者を対象に研究を行うことは、緩和ケアの実践家としての倫理を問うことになり、このことを含め科学研究が今後の大きな課題となっていると述べられた。

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