Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.32
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2006  32
指定演題2
「ケアのピットホール2」腹部症状の対応を考える
−がん性腹膜炎、イレウス−
演者 : 十和田市立中央病院  蘆野吉和
関西労災病院  冨田尚裕
座長・報告 : 早石病院  山崎恵司
 消化器症状は食欲不振、便秘、嘔気と嘔吐、消化管閉塞、腹水と腹部膨満感に分けられ、それらの症状マネジメントは、医療者、患者、家族との良好なコミュニケーションのもとに、チーム医療として提供される。なかでも、がん性腹膜炎に伴う諸症状のマネジメントは難渋することが多い。特にイレウスに対しては難しく、治療は薬物療法と非薬物療法(穿刺排液、内視鏡的治療、手術療法)から選択される。
 蘆野吉和先生(十和田市立中央病院)には、薬物療法と穿刺排液法につき解説いただいた。まず、良性疾患である可能性にも触れつつ、診断の重要性を示された。薬物療法においてはステロイドやオクトレオチドの有用性、エビデンスをふまえた輸液の適正化、ついで腹水持続排液法について述べられた。在宅ホスピスケアを視野に入れることの大切さを強調され、その際の患者教育や有用な機器についても紹介された。
 冨田尚裕先生(関西労災病院)には、内視鏡的治療、手術療法につき解説いただいた。まず、全身状態や予後を含め、適応を慎重に検討することの重要性を示された。内視鏡的治療においては、減圧・ドレナージや水分・栄養補給目的の瘻孔造設術と閉塞に対するステント留置術につき述べられた。前者はPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)、後者はEMS(Expandable Metalic Stent)を中心に、合併症を含め話された。さらに下部消化管閉塞に対するステント留置術は、手術に比し遜色のないデータが出つつあることとともに保険適応がないことも付け加えられた。手術療法はバイパス術と人工肛門造設術を主に話された。対象症例の原疾患としては胃癌に比し大腸癌の方が多く、成績も良好であった。
 これら各種治療法をふまえたうえで個別に対応することが重要であり、そのためには、全身状態評価や予後予測を含め、さらなるエビデンスの積み重ねが必要である。

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