Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.32
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2006  32
指定演題1
「ケアのピットホール」感染症対応を考える
演者 : 神戸アドベンチスト病院  山形謙二
聖路加国際病院  林 彰敏
座長・報告 : 兵庫県立加古川病院  加堂哲治
 緩和医療が必要な患者の感染症対応は、診断・治療が困難であるばかりでなく、全身状態が悪化してきた場合や積極的治療を希望しない患者への対応は、まだ一定のコンセンサスが得られていない。マニュアルやガイドラインも今のところ存在しない。
 緩和医療において、感染症の診断は難しい。発熱の原因として腫瘍熱や薬剤性の発熱もありうるし、白血球数はステロイドの使用やストレスでも増加する。またステロイドやNSAIDsも多用されるため、感染症による発熱が顕著でないことも多い。そのため、感染症の診断と抗菌剤の使用に当たっては、慎重かつ的確な判断が要求される。
 最近までに、この領域で8論文が報告されているが、その中では緩和の必要な患者の感染症発症は26〜83%で、そのうち60〜72%で抗菌剤が使用されている。神戸アドベンチスト病院緩和病棟のデータでは、59.4%が感染症を合併し、82.4%に抗菌剤が使用され、64.3%に効果があり、特に尿路感染症で著明であった。その際臨床症状や検査成績を加味した「PPS」という指標が効果判定に有効であった。林先生の前任地日本バプテスト病院ホスピスでも、感染症の発生は75%で、抗菌剤は67.6%で使用され、64%が有効であつたが、いずれの臨床検討でも、予後を延長させることはなかつた。しかし聖路加国際病院では60〜72%の患者で症状を改善させたという経験もある。抗生剤をめぐる議論には(1)延命か症状緩和か (2)患者の負担 (3)副作用の問題などがあるが、症状コントロールに効果があれば、感染症の診断努力を行い、疼痛コントロールと同様、緩和ケアの一部として抗菌剤を積極的に使用するべきかもしれない。今後ガイドラインの作成が望まれる。

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