Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.31
May 2006

日本緩和医療学会 ニューズレター第31号

施設訪問記
高知厚生病院(高知市葛島1丁目)
千葉県がんセンター整形外科  安部能成
 高知厚生病院は高知市の東部に位置する。高知龍馬空港からJR高知駅と結ぶリムジンバスで30分ほど、逆にJR高知駅からは市電の便が良く、西高須の停留所から徒歩1分である。1964年の開設以来、地域社会の中に溶け込む方針で診療活動を展開されてきた。病院の南方に位置する五台山から眺めると、いかに街中に建っているかが分かる。(写真1)
 現在の病院全体の病床数は76床。内訳は、療養型病棟36床、一般病棟25床、ホスピス・緩和ケア病棟15床である。今回の目的地であるホスピス・緩和ケア病棟は、開設当初9床で始まったが、地域の需要に応える形で1.5倍に増床された。5階建ての病院の建物には、この他、通所リハビリテーションこうせい、外来診療部門とリハビリテーション部門が併設されている。
 4階にあるホスピス・緩和ケア病棟を訪れると、まずラウンジに通され、居合わせたボランティアさんにコーヒーを勧められた。病院というより御家庭を訪問したときの雰囲気に近いものを感じた。(写真2)なるほど、頂戴したパンフレットの中央にも、「お茶をどうぞ。ラウンジでパーティーを開きませんか?」とある。高知では家族全員が働きに出ていて家庭には介護者が居らず、在宅療養には難しい面があり、病院が生活の場になることが多い、との説明があった。
 病室は、広く明るい。家具、調度にも気配りがされ、コンクリートの建物という印象が和らいでいる。(写真3)日本全国のホスピス・緩和ケア病棟を同じに捉えてはいけないが、全国平均をわずかに下回る15床のフロアに、ゆとりが溢れていたのはスタッフの努力によるものが大きいことを感じさせた。たとえば、手作りのストッパーである。風を取り入れるのに病室の引き戸の脇に置かれていた。(写真4)写真のように縦に置けば20センチほどの隙間ができて、カーテンがそよぐほどの風を取り込めるし、横に置けば3センチほどの隙間にできる。さらに、引き戸が閉まるときの防音効果もある、とのことで、職員の方々の気遣いが表現されていた。また、壁には本格的な絵画がかかり、癒しの雰囲気をもたらしている。
 6階には屋上庭園があり、花を愛でることができる。訪問当日も暖かい日差しとともに、甘い花の香りで満たされていた。四国山地を眺めながら、生まれ育った町を回想される方もあるだろう。この階には礼拝堂もあり、瞑想や祈りをする場所として、あるいは、出版パーティーの会場として使われている。ともすれば宗教排除の形で、信教的自由を確保しようとするところがあるが、病院にとって採算の取れないスペース(副院長の話)を置き、自由に利用できる空間を用意されている姿勢には、ある種の感銘を受けた。当日ご案内いただいた山口龍彦副院長、岩本泉看護部長、伊東理沙ナースに感謝申し上げます。

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