Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.30
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2006  30
施設訪問記
廿日市記念病院(広島県廿日市町)訪問記
千葉県がんセンター整形外科  安部 能成
  秋も深まる10月20日、晴れた広島空港を出たリムジンバスは西に向かった。広島駅でJR山陽線に乗り換え、宮内串田の駅からは山側に車で5分ほどかかった。安芸の宮島を望む風光明媚な山のふもとに瀟洒な建物が見えてきた。
 廿日市記念病院の緩和ケア病棟は15床で全国平均から見ると小規模である。その特色はリハビリテーション病院が、患者さんの要望に基づいて展開してきた結果として現在の形態になってきた、という患者中心医療の実践がなされている点にある。はじめに緩和医療ありき、ではない点でユニークであり、リハビリテーションの力を緩和医療にも展開していこうという院長先生の意向も、一般的にリハビリテーション・スタッフの配置が少ない緩和ケア病棟としては珍しいことである。リハビリテーション室が充実していることは特記されるが〈写真1〉ハード面のみならず、ソフト面でもリハビリテーション部門では、患者さんから言語療法の要望が多いことに基づき、言語療法士が配置されて、ターミナルケアの一翼を担っておられた点が特筆される。また、婦人科医師が配置されているのは、脳外科出身の院長先生から見てカバーしきれない専門分野であることと、高齢者に女性が多いことによる、という説明もあった。
 4階建ての建物は、あちらこちらに医療者の心意気が表現されていた。例えば、病棟内の診察室〈写真2〉はプライバシーに配慮したインフォームド・コンセントのために設けられた。すなわち、大部屋で病状説明を行うと、同室者に筒抜けになってしまうからである。言われてみれば当たり前のことであった。各々の病室の名札に男女の違いがないことも個人情報保護の観点から採用されていたし、喫煙室にも擦りガラスが嵌められ〈写真3〉、人の存在は認識できるが、特定はできないという状況に設定される、という心配りである。そして、建物緑化では単なる庭の域を超え、庭園と呼べる水準にあった。しかも安易に園芸療法とは語っていない。
 各種の入浴室〈写真4〉が整備されているのは看護職員の要望に当局が応えたことに始まったそうだが、現在は入院患者さんに大変好評であるという。自力で入れる人の浴室、半介助を必要とするもの、全介助のものが用意されている。たしかに、日本人は風呂好きで有名であるが、同じ文化にあって、緩和ケア病棟も例外ではないことに気がつかされた。
 自分が患者の立場であったら、どうして欲しいと思うか、という院長先生のお言葉に接し、医療者として忘れてはならないことである、と再認識させられた。その姿勢は、民間病院でありながら、病院の名称に地名を用い、地域社会に心配りしている点にも現れていると思われた。

写真1
写真1

写真2
写真2

写真3
写真3

写真4
写真4

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