Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.30
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2006  30
学会印象記
ISPOR(International Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research) Europe Conference印象記
高知女子大学 看護学部  斎藤 信也
 この度、緩和医療学会とは直接関係はないが、関連の深い分野の学会の一つとして、アウトカム研究と医療経済学を扱う第8回のISPOR(International Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research) Europe Conference(2005年11月6〜8日、イタリア、フィレンツェで開催)に参加する機会を得た。もとよりこの分野に造詣が深く、また、わが国のQOL研究のリーダーでもある流通科学大学の下妻晃二郎教授のお誘いで、初めて同学会に演題を出すとともに、やや不慣れな領域の知識を深めることができたので、その一端をご報告したい。
 近年、生存率や生存期間といった客観的ではあるものの、場合によっては患者の満足とは一致しない臨床指標に代わり、患者の視点から臨床効果を判定する指標としてQOLを始めとするアウトカム研究が盛んになってきている。特に緩和医療の分野では生存期間は延長しないものの、患者QOLを改善することを目的とすることが多いことから、特にこうした研究に興味が持たれている。
 今回の学会ではまず、プレ・コースとして「Pharmacoeconomics for Decision-Makers」を受講したが、そこで従来の臨床試験とアウトカム研究を対比して、前者は結果の妥当性は十分であるが、臨床応用が難しい一方、後者は、臨床的有用性が高いが、結果の妥当性が不十分となるとまとめていたのが当を得て印象深かった。こうしたアウトカム測定のためにUtility(効用)という概念が有用であるが、翌日は「Utility Measurement( Preference-Based Techniques)」というコースで、実際にSG,TTO,VASといった直接測定法や、EQ-5D,SF-6Dといった間接的測定法で効用値を計算するトレーニングを受けた。特に後者は質問に回答すればコンピュータプログラムで数値がすぐに得られるが、それをあえて手計算することで、計量心理学の一端に触れることが出来た。臨床領域の人間としては、やや「測定のための測定」といった傾向が否めないこうした研究に対するこれまでの偏見がぬぐわれた貴重な体験であった。わが国でも、この分野に興味を持つ緩和医療関係者は少なくないので、国内でもこうしたトレーニングコースが開催されれば大変有用ではないかと思われた。なお、緩和医療に直接関係する薬剤経済研究としては疼痛緩和のフェンタニルパッチと骨転移に対するビスフォスフォネートのものがみられたが、その詳細はまた別の機会に報告したい。

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