Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.30
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2006  30
Journal Club
重度悲嘆の治療 : 無作為対照臨床試験
山口大学医学部 医療環境学  谷田 憲俊
Shear K, Frank E, Houck PR, Reynolds CF. Treatment of Complicated Grief: A Randomized Controlled Trial. JAMA 2005;293:2601-2608

 悲嘆ケアの重要性はよく認識されている。とくに、1)死を認められない、2)死に対する怒りと辛辣さ、3)死者に対する強い思慕と熱望の念と共に再燃する心痛、4)死にまつわる痛ましい突き刺さる思考を含む死者への思いにとりつかれる、などが認められる重度悲嘆が問題となる。重度悲嘆は心的外傷後ストレス障害(PTSD)に類似するが重要な点で異なり、抑うつと不安とも明白に異なる。それらが合併することがあり、重度悲嘆は全悲嘆者の10%〜20%とされる。
 悲嘆は悲しみ、罪の意識、社会からの隔絶などの抑うつ症状を伴うので、抑うつの治療である対人関係心理療法(IPT)の骨格を治療に利用できる。一方、思慕や熱望といった喪失に関連する悲嘆特有の症状と共に不信や突き刺さるイメージ、退避行動というPTSD症状があり、先行研究で認知的方策が喪失に特異的な苦痛に有効であり、IPTと認知・行動療法を統合できることが示唆されている。そこで、修正IPT法にPTSDに対する認知・行動療法に基づく技術を含む重度悲嘆者に対する治療法(complicated grief treatment, CGT)を開発した。
 先行臨床試験でCGTがIPTより優れていると示唆されたため、無作為対照臨床試験を行った。病院から紹介されてきた、あるいは広告で応募した重度悲嘆に該当する女性83名と男性12名、年齢は18から85歳を対象として、重度悲嘆療法の有効性を調べた。参加者を無作為にIPT群46名とCGT群49名に分け、IPTもCGTも導入期、中間期、終了期という3段階の計16セッションを平均19週にわたり行った。後者に加えられた治療技術は、死者との想像上の会話を行うなど喪失を認識させることが基本で、治療者は失った人との人間関係を肯定的側面と否定的側面も含めて現実的に評価し、人間関係と活動を満足させることを奨励・支援した(詳細な方法は原著者から入手可能)。治療効果は、悲嘆点数(Inventory of Complicated Grief)20以上の改善を有効とした。
 その結果、両治療法とも重度悲嘆を軽減させ、改善率は重度悲嘆療法の方が対人関係心理療法より高く(51%対28%、P=0.02)、回復速度も速かった(P=0.02)。NNTは4.3(IPTを対照とした場合)であった。治療法が難しいなどの理由で両群ともに離脱例がみられたが、CGTはIPTより良い結果が得られた。初めての臨床試験で結果は勇気づけられるものであったが、CGTに反応したのが51%であり、さらなる研究が必要である。抗うつ剤を投与されていた悲嘆者にわずかながら良好な結果が得られたことから、薬剤を併用しての臨床試験などが次の課題と思われる。

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