Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.30
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2006  30
ケタミンの麻薬指定決定について
厚生労働省医薬食品局 監視指導・麻薬対策課 課長補佐  富永 俊義
 ケタミンは、現在、臨床的には麻酔薬及び鎮痛薬(適応外)として使用されており、他に獣医学領域や試験・研究(動物実験等のための利用もある。厚生労働省は、この物質を麻薬に指定する予定で、現在その措置に関する意見を国民に広く募るためパブリックコメントを募集している(2005年12月14日から2006年1月13日まで)。麻薬に指定されると、厳重な管理(保管、記録等)が求められるので、現場の負担は増し、従ってこの薬を使いにくくなることは残念ながら避けがたい。
 厚生労働省の薬物行政は、決して取締り一辺倒ではなく、医療用麻薬の適正使用を推進して末期がん患者のQOL改善を図ることもその一環である。有用な鎮痛補助剤であるケタミンを使い難くすることは本意ではない。しかしながら、当課では、以下の事情でケタミンは麻薬に指定せざるを得ないと考えている。
1. ケタミンの性質など
ケタミンの依存形成性、耐性形成、幻覚妄想惹起作用、医療従事者を含む依存症例(死亡例あり)に関する多数の報告がある。その作用は、大まかには、既に麻薬に指定されているフェンサイクリジンに類似すると言える。
2. 国内の乱用
クラブやディスコ等で「K」とか「スペシャルK」等と呼ばれるケタミン粉末(密輸品と考えられる)が主に鼻からの吸引により乱用されていることが報告されている。医療用ケタミン(注射)の乱用は報告されていない。ケタミン乱用により惹起された精神疾患の症例や、ケタミン乱用との因果関係が強く疑われる死亡例も報告されている。
3. 海外の状況
 ケタミンの乱用は国際的に悪化しており、 国連麻薬委員会(経済社会理事会の下部委員会。国際的な薬物問題に関する意志決定の中心機関。)は、その決議で、各国がその規制を考慮すべきことを呼びかけている(2002年)。また、WHOも現在ケタミンの麻薬指定を麻薬委員会に勧告すべきか否かを検討中と聞く。ケタミンは、米国、仏、東南アジア諸国等で規制薬物となっている。
 東アジアでは問題は一層深刻で、例えば香港ではケタミンはヘロインに次ぐ第2の乱用薬物で、特に若者の間では、MDMAを押さえナンバーワンの人気である。中国でもトン単位の押収が報告されており、この薬物が日本に本格的に上陸した場合の脅威は深刻である。
 厚生労働省は、製造元や関係医学会に対してケタミンの供給確保や効能拡大申請を要請するなど、麻薬指定による現場の不便を最小限とすべく措置を講じている。また、麻薬指定後、その施行までに十分な周知期間を設ける予定である。日本緩和医療学会会員の方々のご理解とご協力をたまわりたい。

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