Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.30
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2006  30
特別講演1
終末期医療に関する国民の意識
司会・報告 : 札幌医科大学医学部麻酔科  並木 昭義
 講師の町野朔教授は「終末期医療に関する調査検討委員会」の座長を務められ、また東海大学病院および川崎協同病院での安楽死事件を取り扱った法律家である。最近終末期医療で死のことがクローズアップされるにはいくつかの理由がある。1.日本では以前病気に苦しむ終末期患者に対して病院以外で積極的な安楽死が行われたが、それに対する法律的評価や対応がなおざりにされ、今日まで至っている。2.1960年以降に尊厳死を望む声が出てきて、無駄な延命治療を拒否する、そして自分の生命、死は自分が決める自己決定権を主張するものが増えている。3.医療の現場では患者の死が密室の内で医療者達で行われており、情報公開されないことから、医療不信に陥っている。4.医療者が終末期医療に対して無関心、あるいは冷たい態度で接していることに対する批判が多くみられるようになっていることなどを挙げている。
 リヴィングウィルを明示している、あるいはエホバ患者の場合にはDNR や治療(輸血)中止しても問題になることはないと思う。しかし意思決定の出来ない老人を含め、終末期患者では家族、医療者間で納得、同意を得てもDNR、治療中止、消極的安楽死、ましてや死に直結する積極的安楽死を行うと、刑事罰に問われることになるという。患者が安らかに死ぬことができて、家族、医療者が納得、満足すれば良いとこれまで思われてきた。しかしそのことが本当に患者にとって適切であったかを証明できなければならない。そうできない場合にはその施設の委員会や他の機関に通知、承認を得る必要が生ずる。この問題は個々人の心情に大きく関与するだけに対応は極めて難しい。従ってこれを防ぐために法律で規制するのは適切ではなく、医療者間で適切な規範(ルール)を作る、あるいは行政的ガイドラインを作成するのが妥当である。それと同時に国民的コンセンサスが得られるような働き掛けが重要であると述べていた。国民の意識、権利は時の流れと共に変化していく。従って医療者側は患者、国民のニーズに適合する意識を持ち、対応していくことが必要であると痛感した。

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