Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.30
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2006  30
巻頭言
緩和医療の新しい展開―緩和ケアチームのことなど―
(前)厚生連海南病院緩和ケア科  渡辺 正
 病院の玄関を入ると、いくつか並ぶ広報版のひとつに、緩和ケアチームが大きく紹介されていた。がんの治療でも先進的な一市中病院において、がんの治療や病態にともなう症状コントロールやコンサルテーションを行うサポートチームの存在を、病院の理念として明確に打ち出していることに、うれしい思いとともに感銘を受けた。
 なぜこのような感銘を受けたのだろうか。私はダブリンのOur Lady's Hospiceを訪れた時、胃がん手術の成功やレントゲン線の発見などの華々しい近代医学の発展の裏で、社会のひずみにより貧しさと病で苦しむ人々への奉仕活動によって社会を支えたホスピス運動の役割を現場で感じ取ることができた。そのシスターたちがロンドンで活動したSt. Joseph Hospiceを訪れた時も、ここでシシリー・ソンダース博士がトータルペインに対するトータルケアの考えと、痛みに対するモルヒネの研究から、緩和医療におけるケアのあり方と臨床医学としての方向性を確立され、そしてそれがSt. Christopher's Hospiceに、また現在の私たちに連なっているのだなあとの思いを馳せることができた。このように医学の進歩だけではなく、ホスピス運動によって始めて社会の均衡が支えられてきたように、少しオーバーな表現を用いれば、緩和ケアチームのサポートによって始めて病院における癌医療が完成されていくと思われる。広報版を見て感銘を受けたのは、そのような芽が現実になりつつあること、また院内にトータルケアの考えを浸透させるために頑張っている医療者がいると感じたからだと思う。
 ニューズレターで緩和ケアチームの登録を呼びかけたところ、109施設から登録があり、また診療加算を取っているチームが約50施設と増加している。がん治療の初期から継ぎ目のないケアを提供することに加え、癌死の約90%が一般病院である現状から、緩和ケアチームの発展はきわめて重要な課題である。スタッフ、外来、採算性などの制度上の問題点の集約とその改善に努め、さらに活動の円滑化とケアの質の向上にむけた活動指針を作成していくことなどを緩和ケアチーム検討委員会の責務と考えている。
EPECの紹介などの教育面の進展や、末期がんの特定疾患の認定によるデイケアの展望など、緩和ケアに新たな方向が生まれている。患者が深刻な病のなかにあっても、自己のコントロール感をもち、社会性をもって主体的に生きていくことができるようなサポートシステムとして、緩和医療が現在の医療の中で重要な位置を占めることができるように、少しでも寄与できればと願っている。

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