Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.29
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2005  29
施設訪問記
社会保険神戸中央病院 緩和ケア病棟 訪問記(兵庫県神戸市北区)
千葉県がんセンター整形外科  安部 能成
 阪神淡路大地震から10年が経過し、震災の爪あとを見受けることもなくなった港町三宮から車で北方に40分。新神戸トンネルを抜けると、神戸市の奥座敷をなす山間部に、すっぽりと入っていた。その山を切り開いた土地は鈴蘭台と呼ばれているが、瀟洒な住宅が続く先に7階建ての白亜のビルが建っていた。
 社会保険神戸中央病院 緩和ケア病棟は、病院の建物の最上階の7階に位置する全個室22床の院内独立型のホスピスで、天候に恵まれれば淡路島、夜は瀬戸大橋を望めるという眺望が自慢である。しかし、風光明媚な土地柄というより、大都市神戸の新興住宅街に位置することが、このホスピスの性格を理解する背景になる。
 平均在院日数が35日、というのは、症状緩和と在宅支援を標榜するホスピス緩和ケア病棟が多くなった現在、やや古めかしい印象を与える。他方、都市化の中で、新興住宅街では成長した子供たちが家を出てしまい、夫婦だけの世帯での老老介護となっている。そのような地域に存在する緩和ケア病棟は、結局、生活の場を求められるようだ。まして、入ってみると居心地が良い場所、となれば、尚更のことであろう。
 この緩和ケア病棟は、病院機能評価機構の認定も受けているが、ハードウェアとしてみれば、とりたてて特色のない、ある意味ではありきたりかもしれない。日本では珍しく、喫煙室が設けられていたのはロンドンのセントクリストファーズ並の対応であるが、案内してくださった新城先生のお話では、利用するのは患者でなく、ご家族であるという。
 けれども、その内容をソフトウェア的に分析してみると、捨て難い味がある。たとえば、がん告知を入院の前提条件としていない。常勤の職種構成は、施設基準的に最小限度の医師と看護師だけである。専門看護師も認定看護師もいないが、どのスタッフも肩肘張らず、自分の職場に愛着を持って活動されている。その一つの証左は、職員の手になる絵画が、玄関に小さく掲げられていることであろう。我が国では、ホスピス・リハビリテーションのパイオニアであられた吉岡先生が、ご自分の勤務されていたホスピスを最後の場所とされた。また、先ごろ亡くなられた現代ホスピスの創始者であるソンダース博士も、ご自身が創設されたホスピスの1室で最後を迎えられた。このように、自分が入りたい施設、というのもひとつの評価基準であろう。
 今回の施設訪問を終えて、緩和ケア病棟のフロアを振り返ったとき、こんな雰囲気の人たちに囲まれたい、と、後味のさわやかな訪問であった。岡田部長先生、ご案内くださった新城先生、師長さんはじめナースの方々に御礼申し上げます。

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