Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.29
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2005  29
Journal Club
ホスピスケアを受ける進行癌患者の感染症状コントロール
聖路加国際病院 緩和ケア科  山川 宣
Symptomatic Treatment of Infections in Patients with Advanced Cancer Receiveng Hospice Care
J Pain and Symptom Manage 2005;30:175-182

【目的】進行癌患者で抗微生物剤の使用ガイドラインを決定するため、臨床的に疑われたか確診された感染症状を改善する効果の前向き調査
【対象】24ヵ月に外来ホスピスケアを受け、除外基準をクリアした1,598人の患者。
【方法】感染症は症状から判断され、経口抗微生物剤を症状改善を目的として主治医の判断で投与。
【結果】患者の89%以上はKarnovsky PS 60%未満。1,598人のうち623人が685の感染症と診断され、633の感染症が治療された。感染患者と非感染患者の特性に有意差はなかった。500あまりで菌が同定され、使用抗生剤の大半は感受性を有していた。症状改善は尿路感染209/265(79%)、気道感染95/221(43%)、口腔感染症29/63(46%)、皮膚または皮下の感染症24/59(41%)、菌血症0/25(0%)。生存日数は感染症発症患者(623人) 29.1日、非発症者(975) 30.5日、抗生剤治療患者(573) 29.3日、抗生剤治療なし(1025) 30.7日と、それぞれ有意差は認められなかった。
【考察】患者の39%が何らかの感染を発症した。大半の尿路感染では症状改善したが、他の感染症の半数は改善しなかった。ステロイド投与および尿道カテーテルは感染率を上げなかった。提言されるガイドラインa) 抗生剤治療はその他の治療と同様に意思表示の機会を持たせる(b)抗生剤使用は症状改善を目的とし、注意深く判断する(C)医師と患者は、進行癌患者での抗生剤の限界を知っておく。
 大人数対象の前向き研究で抗生剤の効果と限界を示した意義深い論文である。ステロイドと尿道カテーテルが感染率を上げないのも意外性がある。ただし生存率の比較は抗生剤そのものの効果をみるにはやや弱いこと(約6割が症状改善ないことから間接的には示されるが)、本邦で頻用される注射抗生剤の効果については本研究では述べられていない(他の小規模研究は存在する)。今後の研究が望まれるとともに、患者が抗生剤不使用の選択をした場合に一定の医学的倫理的根拠を与えるものであろう。

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