Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.29
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2005  29
公開討論会
がん性疼痛のための全人的ケア:チーム医療とそれぞれの役割
演者 : Memorial Sloan-Kettering Cancer Center
Dept. of Neurology
Kathleen M. Foley, MD
Nessa Coyle, RN, PhD, FAAN
司会 : 国立がんセンター中央病院 麻酔・緩和ケア科  下山 直人
静岡がんセンター 緩和医療科  栗原 幸江
 第10回日本緩和医療学会総会・第18回日本サイコオンコロジー学会総会合同学会とJapan Partners Against Pain(JPAP)との共催で、初日最後のプログラムとして公開討論会が催された。がん性疼痛および緩和医療の領域で世界的に有名なDr. Foley とDr. Coyle両氏のお話を合わせて聞けるとあって、20時という遅い時刻の開催にもかかわらず多くの参加者があったこと、また時差を物ともせず熱い思いを展開されたお二人のエネルギーに感心させられた。
 まずDr. Coyle からは緩和ケアに関わる看護師の役割についての話があった。アセスメントとモニタリング、ケアプランの立案とコーディネート、患者家族に対する教育、スタッフに対する教育とコンサルテーション、問題解決の推進、院内変革、リサーチと多岐にわたる役割の数々は、氏自身が日常臨床で患者の生の声を聴き、症状のつらさを目にし、そうした実態を「臨床データ」という共通言語に置き換え、ケアの質向上のためのプログラムを院内のみならず地域に根付かせていったという経験に基づく説得力をもって伝えられた。また症例提示をもとに多職種協働の動きとその中での各職種の専門性の尊重と円滑なコミュニケーションの大切さが語られた。
 Dr. Foleyからは、氏の勤務するMSKCC内のPain and Palliative Care Serviceの活動を通じた緩和ケアチームの役割、緩和ケア専門研修、終末期ケアのパスとそれに伴う「終末期ケアの指示フォーム」の導入、アメリカにおける緩和ケアの進歩などについての話があった。緩和ケアチームの働きが院内における緩和ケアの啓発活動となることを示す例として、終末期ケアのパスと指示フォームの導入が医療スタッフに対して「患者の限られた時間を認識し、適切なケアを提供する機会を確保する」ステップとなること、またMSKCC内の緩和ケア病棟と一般病棟とを比較し、緩和ケアの導入により患者のQOLが向上し満足度が高まるのみならず、医療費削減にもつながるというメリットがあるということが提示された。「死を否定するアメリカ社会の中で、終末期医療に対する一般市民の意識を高める」ための数々の活動についても触れ、こうした活動を継続することにより「質の高い緩和医療を求める声」を国民の中からはぐくんでいくことが、緩和ケアの啓発につながるのだと結ばれた。
 余談ではあるがアメリカでは緩和ケアチームのコアメンバーとしてソーシャルワーカーが、特に心理社会的サポートを担う役割を果たしている。今回の討論会でのやり取りが、臨床現場における「医師―看護師―ソーシャルワーカー」間のやり取りの雰囲気とオーバーラップするものとしてほんの少し伝わったら幸いである。 緩和ケア領域には、患者の生命の終焉に伴うさまざまな課題が喚起され、その対応には多職種の専門性が求められる。その施設ごとのニーズに合わせて構成される多職種チームが、それぞれの専門性を活かし、施設内のみならず周辺地域の緩和ケアの啓発への推進力となりうる。Dr. FoleyとDr. Coyleから多大なエネルギーと励ましを頂いた参加者は多かったのではないかと思う。(報告:栗原幸江)

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