Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.29
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2005  29
ランチョンセミナー3
The Impact of Cancer Pain Management
on the Patients and Caregivers
患者とケア担当者に与えるがん疼痛治療の影響
演者 : Memorial Sloan-Ketteringがんセンター Dr Kathleen M Foley
司会・報告 : 埼玉医科大学  武田 文和
 がん疼痛マネジメントの世界の第一人者であるFoley博士は、来日のつど日本のがん疼痛治療に大きなインパクトを与えてきた。立案から25年経つWHOがん疼痛救済プログラムの当初からWHO委員を務め、WHO方式がん疼痛治療法を起案したWHO会議のすべての議長を歴任したという専門家である。今回の講演もわが国の医療機関すべてが参考とすべき具体的な話であった。
 要約すると、1)がん患者の痛みの多くが不適切にしか対応されないことが未だに少なからずあり、患者のQOLに大きな打撃を与え、抑うつ、行動の制約、ケア担当者への依存などを増大させ、ケア担当者自身の悲嘆も強め、超終末期のケアへの自信をなくさせている。2)しかし、適切に教育されたケア担当者は自らの役割を自覚し、学んだことを適切に活用するので、患者は良好なQOLに復帰し、痛みからの解放はしばしば生存期間の延長につながる。3)がん患者の痛みの発生頻度が高いのに、適切な治療の実施を妨げる阻害要因の多くが除去されきれていない。4)痛みの治療は、痛みの消失、日常活動の回復(できれば仕事へも復帰)を目標に、副作用の防止、薬の異常使用行為の抑止を念頭に行う、など。
 さらに最近の主な話題として、がんの痛みの発生頻度の把握(成人および小児)、痛みの評価アルゴリズム、薬の体液中濃度と鎮痛効果や副作用との関連、新製剤や新機材の工夫、鎮痛補助薬使用のガイドライン作成、動物モデルを用いた痛みの発生機序解明に基づく薬の使用法の改善、遺伝子レベルの差によるオピオイドへの反応性の個人差、オピオイド投与量の上限設定の撤廃、オピオイドローテーション、NMDA受容体、オピオイドによる便秘の選択的防止薬methylnatrexoneなどについて言及した。そして痛み治療・緩和ケアプログラムのさらなる普及が必要であり、医師と看護師からなる緩和ケアチームが良質で包括的な症状緩和法を提供していけば、全体的な痛み治療の質の向上にも貢献すると述べた。

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