Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.28
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2005  28
書評
ホスピス医に聞く一般病棟だからこそ始める緩和ケア
著者 池永昌之/MCメディカ出版
カレスアライアンス 天使病院 外科  中島 信久
 がん患者の90%以上が、緩和ユニットを持たない一般病棟でその最期を過ごされるという現実を考えると、そこで働く医療スタッフが緩和ケアの基本的知識を得ることはとても必要である。緩和ケアに関する優れたテキストやマニュアルは数多く出版されており、充実した内容ゆえ、それらから多くのことを学ぶことができる。しかし、現状はといえば、自分の専門科の日々の仕事で手一杯であり、緩和ケアの学習に十分な時間をかけることができないというのも事実である。どうすれば、こうした立場にある多くの医療スタッフに緩和ケアを普及させることができるのかということは重要な問題である。
 最近、緩和ケアの概念を、救急医療に準えて、1次、2次、3次に分類して捉える考え方が広まってきている。この考え方によれば、一般病棟での緩和ケアの基本は「1次ケア」であり、そこに関わる全ての医療スタッフが学んでおかなければならないプライマリなものである。
 本書では、まず総論として、長い経過の中での患者、家族との関わりから、「一般病棟だからこそ作れる信頼関係」について述べ、それをもとに実際に現場でよく遭遇する問題点とその具体的な対処の方法を説明している。続く各論では、「疼痛マネージメントの実際」、「コミュニケーションの方法」、「スピリチュアルケア」などについて、Q&Aをベースに図表を加えることで、日常臨床の場で多くの人が知りたい点、悩んでいる点について、実際的な解説をしている。特に、「コミュニケーションの方法」の部分では、インフォームド・コンセントの本来のあり方やBad Newsを伝える場面での問題点とその対応などについて、初学者にもわかりやすく記述されている。
 ボリュームとしては他のテキストやマニュアルよりも少ないが、コンパクトな中に、目の前の現場ですぐに役立つノウハウが過不足なくまとめられている。研修医やプライマリケア医を始め、多くの医療者がこの本で学ぶことにより、一般病棟における明日からの緩和ケアが充実していくことを期待している。

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