Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.28
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2005  28
学会印象記
第10回日本緩和医療学会・第18回日本サイコオンコロジー学会総会
合同大会に参加して
豊川市民病院 精神科  加藤 健徳
 2005年6月30日〜7月2日に横浜で開催の第10回日本緩和医療学会・第18回日本サイコオンコロジー学会総会合同大会に参加させていただきました。期間中は湿度の高い梅雨空にもかかわらず、大ホール内は立ち見がでるほどの盛況で、質疑応答も多く、活気・熱気に満ちた3日間でした。合同大会ということもあり、この分野に関心を寄せる多職種の方々が参加されていました。3つのシンポジウム、6つのレクチャー、3つのワークショップ、3つのランチョンセミナーが行われました。各々は大変密度の高いプログラム内容であり、初めての参加の私にとっても大変興味の持てる内容でした。
  その中でも、特に印象に残ったのは、初日のシンポジウム「Bad Newsをどう伝えるか」でした。4人のシンポジストの方々が、それぞれがん経験者、看護師、精神科医、コミュニケーションスキルトレーニング(CST)の専門家としての立場から発表されました。がん経験者の関原氏は、ご自身の経験から、「時間は必要だが、人には苦難を乗り越える力がある」「がん診断時より、再発時のショックのほうがはるかに大きい」「がんになっても仕事を続けられたことがよかった」「医療スタッフへの信頼ははじめからあったのではなく、治療関係のなかで作られた」ことを指摘され、最後に「がん患者の心の支えは家族、医療スタッフ、友人、職場などすべての人間関係です」とまとめておられました。関原氏のご参加は、医療従事者間のコミュニケーションが一方視的になりがちな日常診療に、大変いいインパクトを与えるものと思いました。看護師としての立場から北里大学の近藤先生が、「患者を尊重することが全ての基本である」と指摘され、精神科医としての立場から国立がんセンターの内富先生が、患者のコミュニケーションに対する意向調査の結果はアメリカでは6要素であったのに対して日本では4要素と異なっており、それは日本固有の特徴であることを発表されました。最後にMDアンダーソンがんセンターのBaile先生がCSTのプログラムの詳細について紹介されました。質疑応答では、Bad newsを患者そしてその家族に、いつ、どのように知らせるべきかについて議論されました。これらを聴いて、私は医師、看護師、患者、家族のそれぞれの間にBarrierがあり、CSTを活用してそれを乗り超えていくことが不可欠なのだと感じました。
  ワークショップ「緩和ケア・サイコオンコロジーの卒前・卒後教育の現状と課題」では、緩和ケアの教育プログラムとしてEducation on Palliative and End-of-Life Care-Oncology (EPEC-O)の紹介があり、この領域への人材供給システムの問題、教育プログラム作成の必要性などについてディスカッションが行われ、同分野のニーズの高さと、今後の更なるシステムの構築の必要性を感じました。
  学会2日目には、シンポジウム「緩和医療の最前線」に参加いたしました。その中で、MDアンダーソンがんセンターのBruera先生が、がん患者でみられる症状の多くが多要因であり、それらのうち現在分かっている症状のスキーマの説明、症状の原因を表にすると標的が視覚化され対応しやすくなること、倦怠感に対してメチルフェニデートの投与や水分補給が有効であること、症状緩和についてさらなるデータの蓄積が望まれるなどの発言をされ、個人的には本発表が印象に残りました。
  3日目のシンポジウム「終末期をめぐる課題」では、聖隷三方原病院の森田先生が「緩和ケア病棟で精神的苦痛の大きい患者のうち、約20〜30%は全身状態がそれほど悪くないにもかかわらず大きな精神的苦痛を伴っている」と報告され、その率の高さが私には衝撃的であったと同時に、重要な問題を示唆しているように思われました。またメモリアルスロンケタリングがんセンターのFoley先生が、「米国における死の研究プロジェクト(PDIA)は、この10年に4500万ドルの寄付により運営されている」「米国には囚人のためのホスピスもある」ことを紹介されていました。多くの参加者が、日本と米国との違いに驚嘆していたようでした。
  ランチョンセミナー「がん患者の抑うつの評価とその対応」では、名古屋市立大学の明智先生ががん患者の抑うつの頻度、症例提示、スクリーニングとして「つらさの寒暖計」の紹介、医療者の注意点などについて指摘されていました。それは医師、看護師にとって即、役立つ内容と感じました。また、そのセミナーの中では、終末期がん患者の実存的苦痛に対する新たな試みとして欧米で施行されているMeaning-Centered Group Psychotherapy、Dignity Psychotherapyの紹介もされました。
  ポスター掲示・発表も大勢の人で混み合っていました。特に発表時にはポスターに全く近づけないほどの人だかりになるブースもみられました。また、熱心にメモをとったり、積極的に質問をする参加者も多く見られました。
  今回の学会では、その他に法律専門の弁護士や文筆家が発表されたりと、医療従事者以外の講演を拝聴できたことが貴重な経験であったと思います。このような多職種の人々が、緩和ケア、サイコオンコロジーという共通の目標に向かって前向きに取り組んでいくのを拝見して、この分野のニーズの高さと、参加者のエネルギーの大きさ・勢いに圧倒されました。「チーム医療」「患者中心の医療」の体現はこういう場から生まれ、広がっていくのではないかと感じました。
  懇親会やプログラム終了後には、この分野の第一線で活躍されている先生方とお話させていただくことも出来ました。このような機会は、学会という場以外になかなか有り得ないことと思います。忙しい3日間でしたが、私にとって刺激になり、大変貴重な機会となりました。本学会に参加することは、緩和ケア・サイコオンコロジーに関心のある若手ドクターやコメディカルの皆様にとって、大変有意義と思います。最後に、私のような若輩医師に貴重で豊かな学習の場を提供してくださった学会関係の皆様に、感謝申し上げます。

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