Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.28
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2005  28
学会印象記
厚生労働省対がん10ヵ年戦略「精神的苦悩」に関する公開討論会報告
千葉県がんセンター整形外科  安部 能成
 2005年6月4日、土曜日の午後という時間帯に、東京築地の国立がんセンター中央病院で「精神的苦悩」に関する公開討論会が開催された。この会は、ホスピス/緩和ケアにおける主要な分析視座のひとつである、トータルペイン(全人的苦痛)を構成する要素として知られる、スピリチュアルペイン(本会では暫定的に「精神的苦悩」としていた)の研究者が一堂に会し、お互いの存在を知り合い、更なる研究の促進を図る、という意味で初めての野心的試みであった。当日は、100名になろうという参加者の熱意にあふれていた。
 班長である内富先生のオープニングの後の、演題(発表者、敬称略)を列挙すると、精神的苦悩の研究経緯;内富班におけるビジョン;カンファレンスシートとケアリファレンスを用いた有用性評価(森田達也)、精神的苦悩に対するアプローチ:現状と展望(赤澤輝和)、スピリチュアリティの概念化;医療者に対する調査(河正子)、実存的苦悩に対する心理・社会的介入の有効性に関する専門家調査(平井啓)、精神的苦悩に対する標準看護計画の作成(井村千鶴)、看護師を対象としたスピリチュアルペイン・ケアセミナーの効果(村田久行)、日本人の精神的苦悩へのアプローチ:その宗教的自然観を手がかりにして(竹之内裕文・田代志門)、臨床現場で捉える精神的苦悩:事例集の作成(栗原幸江)、精神的苦悩に対するFACIT-Sp質問紙及びロゴセラピーの適用可能性(野口海)、精神的苦悩の緩和に向けて:癌専門病院における精神科医の経験より(明智龍男)、スピリチュアルケアに関する研究方法の検討(田村恵子)、となる。
 臨床家と研究者、概念的枠組みや研究対象、方法論などの違いがあり、議論が平行線をたどろうとすることも見受けられたが、進行役の森田先生の卓抜な手腕により、無用な混乱は回避された。もちろん、そのような相違点を認識することが本会の主たる目的のひとつである。性急に何が正しいか、に決着をつける、ということよりも、どのようなアプローチが在りうるのか、について、第一線にある人々が知見を深めることの方が重要であり、早急な結論を求める場ではなかった。むしろ、今後の研究の土台作りという点で、本会は一定の成果を収めたように思われる。このような趣旨で、本会を開催された研究主任の内富先生、森田先生には敬意を表したい。

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