Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.28
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2005  28
Journal Club
低用量ダイアモルフィンの使用により、SATを低下させずに
高齢者の特発性肺線維症による呼吸困難感を軽減した調査報告
昭和大学横浜市北部病院 呼吸器センター  高宮 有介
Low dose diamorphine reduces breathlessness without causing a fall in oxygen saturation in elderly patients with end-stage idiopathic pulmonary fibrosis,
S.Allen,S Raut,J Woollard et al: Palliative Medicine; 2005;19:128-130

【背景】
 肺癌の呼吸困難感については報告が多くあるが、非悪性肺疾患の呼吸困難感へのモルヒネ導入の研究は少ない。本論文では特発性肺線維症を対象としてモルヒネの効果、副作用が検討されている。英国の一般病院におけるコンサルテーション型緩和ケアチームの報告である。ダイアモルフィンはジアセチルモルヒネ(ヘロイン)であり、英国では医療目的で使用が可能で静脈内投与、持続皮下注入法にて使用されている。経口で投与するとすぐに脱アセチル化され、モルヒネになるのでモルヒネのプロドラッグと呼ばれている。モルヒネ:ダイアモルフィン=1.5〜2:1であり、水に溶解しやすく、10mlで6000mgまで溶解可能である。
【はじめに】
 特発性肺線維症の疫学であるが、75歳以上の解剖された人の2%にみられた。75歳以上の患者の予後は発見からわずか2年とされている。治療は困難で唯一、心臓、肺移植があるが現実的ではない。この病気の終末期では多くの患者が呼吸困難感と不安を感じる。しかしながら、呼吸困難感などの症状は疼痛や嘔気のようには対応されていない。臨床医はモルヒネの使用に躊躇がある。何故ならモルヒネ使用による重篤な呼吸抑制を心配するからである。ただし、高用量なら確かに呼吸抑制は起こるが低用量ならどうであろうか。この領域ではEBMがない。11例を対象に低用量のダイアモルフィンの投与を施行した。
【対象と方法】
 対象の11例は8名が女性であり、平均86歳(78歳〜92歳)。診断から平均4.6年(3.1年〜11年)であった。7名は介助が必要、3名は看護師の介助が必要であり、1名は歩行器で5mの移動が可能であった。全例にダイアモルフィン2.5mgのワンショットの皮下注射を行い、前後で評価をした。評価項目は、VAS、脈拍、呼吸数、血圧、SATであった。
【結果】
 VASは100mmが15分後に47mmへダウンし、脈拍は12/分減少し、重大な身体的な変化はなかった。また、呼吸数は 2/分の減少、血圧は6mmHg の減少、SATは1%の減少があった。皮下注射後、経口モルヒネ徐放剤へ移行し、呼吸困難感の軽減の一方で呼吸抑制はなかった。7名は平均5週間で入院中に死亡した。4名は退院し、ナーシングホームへ転院した。
【考察】
 ダイアモルフィンは呼吸抑制なしに呼吸困難感の緩和が可能であった。不安も低下したが、脈拍の低下は抗不安効果だったかもしれない。AbernethyらのCOPDの調査では経口モルヒネの二重盲検法の報告がある。ただし、終末期ではなく救急での数日間の観察であった。この分野での二重盲検法施行は困難性がある。咳については評価しなかった。短期間の観察では結論できないと考えたからで、追跡調査では経口モルヒネへ変更され、咳、とくに夜間の咳は軽減していた。また、倫理的な観点から動脈血のガス分析は施行しなかった。

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