Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.28
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2005  28
ポスターセッション I-H-08〜14
事例報告2
司会・報告 : 四国がんセンター精神科  三上 一郎
 このセッションでは事例報告が7題発表され、熱心な討論が行われた。
 要町病院の吉澤明孝氏らは「緩和医療におけるトラブル」と題して、死後に帰院後処置に関して苦情があった肺がん患者と、輸血・輸液に関する訴えが多いために医療者と良好な関係を維持できなかった白血病患者の2例を通じて、大病院と緩和ケア病棟の中間的な立場で治療にあたる緩和ケア部の厳しい現状について指摘した。
 横浜市立大学の海野智氏は、一般病棟と在宅で良好な症状コントロールのもと看取ることができた高齢顎骨がん患者2症例を通して、比較的珍しい癌腫の症状コントロールについて歯科医の立場から発表された。
 和歌山県立医科大学の北畑恵子氏らは、希死念慮を訴える患者に対する精神的な援助についての症例を通じて、患者の感情の問題に対し、看護スタッフの傾聴する姿勢の重要性を強調した。フロアからは精神症状としての抑うつの評価と薬物治療の併用も苦痛緩和には有効であったかも知れないというコメントがあった。
 京都府立医科大学の藤本早和子氏らは、がん性疼痛が問題となった患者の訴えと対処行動は「痛みについて」「鎮痛薬について」「疾患(がん)について」の3群に分類でき、特に疾患に関する認知に介入することで対処行動が大きく変化したことから、適切な患者への情報提供の重要さを示した。
 愛知県がんセンターの小嶋周子氏らは、身体的な苦痛を抱えながらも、それ以上に家族の期待に応えきれないことが大きな負担となっていた血管内膜癌患者の事例を通じて、治療チームがスピリチュアルペインを理解し積極的に支援することの重要さを指摘した。
 名古屋市立大学の石黒千映子氏らは、同種造血細胞移植の血液悪性腫瘍患者の心理変化を、入院期間を通じてTEG、HADS、バウムテストを用い経時的に評価したが、患者は通常大きな変動をしにくいバウムテストにも劇的な変化が見られる程の精神的な変動を体験していること、さらに患者の情緒安定には身体症状、正常が維持された環境から離れること、移植による自己イメージの動揺が影響することを考察した。
 大阪警察病院の北貴志氏らは、内科、麻酔科、整形外科にまたがる非がん性疼痛患者に対する関わりと問題点を発表した。患者は最終的に転院となったが、不安定な治療形態により、通常に比べ緩和ケアチームが深く関与できなかったことを報告し、医療者間のコミュニケーションの重要性を強調した。

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