Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.28
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2005  28
ポスターセッション I-F-01〜05
不安・うつなど
司会・報告 : 名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学
名古屋市立大学病院こころの医療センター  明智 龍男
 第10回日本緩和医療学会総会・第18回日本サイコオンコロジー学会総会合同大会において、ポスターセッション(不安・うつなど)の司会を努めさせて頂きました。本誌面をお借りして、当日の発表内容や質疑内容を簡単にご紹介させて頂きます。
 本ポスターセッションでは、文字通り、がん患者の不安、抑うつなどの心理的側面に関しての研究報告が中心に行われた。新潟県立がんセンター新潟病院の佃先生、丸山先生らのグループは、『つらさの寒暖計』を用いたがん患者の入院時における抑うつ等の精神的問題を把握する試みについてご報告された。実際に同院でスクリーニングを施行してみると40%を超えるがん患者がスクリーニング陽性であったことに加え、心理的苦痛の危険因子が多要因であったことから様々な職種から構成される医療チームとしての支援体制構築の重要性を示唆された。また、『つらさの寒暖計』は施行が容易で、多忙な医療現場でも実施可能であるとの印象をお話くださった。続いて、横浜市立市民病院の片平先生らのグループが、独自に開発された2ステップの方法を用いて行われた、呼吸器科への入院患者を対象とした抑うつのスクリーニングおよび評価を行う試みについてご報告された。これらの評価をルーチンに施行することで、医療者が患者の心理状態の変化に鋭敏になることや精神科への紹介が容易になることなどを示唆された。以上の2題は、患者の心理的負担を実際の医療現場で早期に発見していく方法を具体的に示してくださった極めて興味深い発表であった。
 次に私自身から、終末期がん患者の適応障害、うつ病、外傷後ストレス障害(PTSD)の関連要因および予測要因について行った検討結果を報告させていただいた。本検討では、終末期がん患者においてPTSDは稀である一方、適応障害、うつ病は高頻度に認められること、および精神症状緩和を行ううえでの包括的ケアの重要性および予防における閾値下の不安・抑うつのマネージメントの重要性を示唆させていただいた。
 次の2題は、がん患者の精神的負担に対するケア提供の阻害要因に関する、東海大学(現、名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学)の奥山先生、遠藤先生からの報告であった。奥山先生は、肺がん患者を対象として、うつ病に対する認識を調査したところ、実際の認識率は極めて低かったことを示された。遠藤先生は、同じ肺がん患者を対象として、精神的ケアに対する抵抗感を検討し、がん患者は精神的ケアに対し様々な抵抗感を示し、中でも薬物に対する知識の欠如が目立ったことを報告された。これら2題の発表を通して、今後がん患者が適切に心のケアを受けることを援助するうえでの、適切な知識や情報提供を行うことの重要性を示唆されていた。
 以上、私が司会を担当したがん患者の心理的問題への演題を紹介させていただきました。いずれも臨床の現場に還元可能な実践的な内容であり、また質も高く、私自身が多くのことを学ばせていただく機会となりました。いずれの研究も次のステップへの展開が期待される内容でありましたので、是非次回学会で、今回の続編をうかがえることを楽しみにしております。

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