Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.28
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2005  28
ワークショップ2
緩和ケア・サイコオンコロジーの卒前・卒後教育の現状と課題
司会 : 筑波大学大学院 人間総合科学研究科  木澤 義之
名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学
名古屋市立大学病院こころの医療センター  明智 龍男
 第10回日本緩和医療学会総会・第18回日本サイコオンコロジー学会総会合同大会において、筑波大学の木澤義之先生とともに、「ワークショップ-緩和ケア・サイコオンコロジーの卒前・卒後教育の現状と課題」の司会を努めさせて頂きました。本誌面をお借りして、当日の発表内容や質疑について簡単にご紹介させて頂きます。
 本ワークショップでは、緩和ケア、サイコオンコロジー、看護の領域の第一線でご活躍の演者の先生方から、教育に関する様々な取り組みやご経験をお話いただくことを通して、現時点における緩和ケア・サイコオンコロジーの卒前・卒後教育の現状と課題を中心に討論が行われた。
 東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部の中川恵一先生は、卒前、卒後2年の研修で身につけるべき、緩和ケアに関する教育目標を具体的にご提示くださった。中川先生が示された一般目標は「緩和ケアの理念に基づいた医療を提供できるように、基本的な知識、態度、技術を習得し、実践できる」であり、具体的な行動目標として、「臨床腫瘍学の理解」、「全人的ケア」、「症状緩和」、「インフォームドコンセント」、「チーム医療」、「生命倫理」などをあげられた。このように昨年から導入された医師の卒後ローテーション研修における緩和ケアに関する教育の一つの枠組みを具体的に示してくださった。一方、大学における緩和ケア教育の実態に関して、講義担当科がばらばらであったり、その講義時間が不十分であること、さらに緩和ケア医を養成することにおいて現在の医局講座制が抱える問題など、多くの大学が直面していると思われる問題にも触れられた。続いて、筑波メディカルセンター病院緩和医療科の志真泰夫先生は、緩和ケア専門医に求められるトレーニングについて発表され、緩和ケアをその求められるレベルおよび専門性によって一般的緩和ケアと専門的緩和ケアに分けて考え、これらに応じたトレーニングシステムを構築していく必要性を強調された。また本セッション内で、木澤先生が、米国で行われている教育プログラムであるEPEC(Education on Palliative and End-of-Life Care) Oncologyの実際を紹介された。
 サイコオンコロジーの領域からは、東海大学医学部専門診療学系精神科学(現 名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学)の奥山徹先生が、サイコオンコロジーの専門家になるために求められるトレーニングについて発表された。奥山先生は、サイコオンコロジーをその専門性によって1次から3次に分けて考え、それに応じてトレーニングシステムを構築していく必要性を強調された。また、現在緩和ケア診療加算の導入によって緩和ケアチームの精神科医に対するニードが飛躍的に高まっているにも関わらず、わが国のトレーニングシステムの欠如のために、そのニードを満たすことができない問題点についても触れられた。さらに、奥山先生自身が歩んでこられた経験をお話され、サイコオンコロジーの専門家になるための一つのロールモデルが示された。
 ピースハウス病院の二見典子先生は、看護の立場から、緩和ケアに携わる看護職の専門家の教育のあり方についてご発表された。二見先生は、わが国における看護師の教育システムの現状を紹介されるとともに、ピースハウスホスピスで以前より実施されている教育プログラムの実際をご紹介くださった。また、緩和ケアに従事する看護師を養成するうえで、教育を提供する人材や研修施設が不十分であることなどを課題として紹介された。
 フロアからは、卒前教育の重要性、医局講座制の抱える問題点、学会のあり方として教育の視点がまだまだ不十分であるなどといったコメントが寄せられ、活発な議論が交わされた。患者さんに適切な緩和ケアおよび心の援助を提供することを可能にするための重要な取り組みの一つとして、医療スタッフに対する緩和ケアおよびサイコオンコロジーに関する教育が重要であることは論を待たないが、今回のワークショップを通して、現時点でわが国が抱える教育システムの課題が実に多岐にわたるものであることが浮き彫りになった。
 私自身、本ワークショップに参加させていただいて、地道で時間のかかる作業である教育システム構築が今後の両学会の果たすべき重要な責務であることを痛感いたしました。(報告:明智龍男)

Close