Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.27
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2005  27
Current Insight
終末期癌患者へのリスペリドン少量投与で発生した Torsades de Pointes
聖隷三方原病院 ホスピス  鄭 陽、森田 達也
Tei Y, Morita T, Inoue S, Miyata H
Torsades de pointes caused by small dose of risperidone in a terminally ill cancer patient
Psychosomatics 2004; 45: 450-451

 新しい抗精神病薬であるリスペリドンは最近せん妄患者への使用が増加している。ハロペリドールなどの古典的な抗精神病薬と比較して安全で副作用が少ないとされているが、致死的不整脈と関連するQT延長を来たす可能性があり、今までに突然死1例、QT延長数例が報告されている。今回我々はせん妄を示した終末期癌患者に少量のリスペリドン投与したところ生じたTorsades de Pointesを経験した。
 症例は84才の大腸癌の女性であり、せん妄と疼痛コントロールの目的でホスピスに入院した。採血検査では軽度の肝機能障害と高血糖が認められた。画像検査では肝転移と腹腔内リンパ節転移が認められた。心電図でのQTc時間は基準値内であった。モルヒネからフェンタニルへのオピオイドローテーションと血糖補正を行い、過活動時にはリスペリドンを1回0.5mg頓用で合計4回服用した。その後せん妄は改善したが、患者が突然前胸部不快を訴え、心電図で多形性心室性頻脈(Torsades de Pointes)を認めた。直ちに硫酸マグネシウムを静脈注射したところ洞調律に復帰した。再検した心電図ではQTc時間が延長し、血液検査では肝機能障害が増悪していた。リスペリドンの服用を中止した後QTc時間は正常化した。その後不整脈は再発せず、患者は肝不全で永眠された。
 リスペリドンは主にCYP2D6酵素群によって肝臓で代謝されるため、肝機能が低下しているとリスペリドンの血中濃度が上昇することが予測される。この症例は、肝機能が低下した患者においてはたとえ少量のリスペリドンでもQT延長から致死的不整脈を引き起こしうるということを念頭におく必要があるということを示唆している。

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