Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.27
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2005  27
Current Insight
医師と看護師からみた終末期癌患者の症状に対する輸液療法の効果
聖隷三方原病院ホスピス  宍戸 英樹
同 緩和支持治療科  森田 達也
Physician- and Nurse-Reported Effects of Intravenous Hydration Therapy on Symptoms of Terminally Ill Patients with Cancer
Morita T, Shima Y, Miyashita M, Kimura R, Adachi I, Japan palliative Oncology Study (J-POS) Group
Journal of Palliative Medicine 2004 ; 7 : 683-693

目的
 医師と看護師からみた終末期癌患者の症状に対する輸液療法の効果を明らかにする。
方法
 質問紙による横断調査。
 終末期肺癌または胃癌患者に対する輸液療法を、輸液量が0.5〜1L/日の群、1.5〜2L/日の群、1.5〜2L/日から0.5L〜1L/日に減量した群に分け、それぞれの群において、脱水に関する3つの症状(口渇、全身倦怠感、意識レベル)および体液過剰に関する4つの症状(気道分泌、浮腫、胸水/腹水、呼吸困難感)が改善したか悪化したかについて、腫瘍医、緩和ケア医、腫瘍看護師、緩和ケア看護師に質問した。
結果
 全国がん・成人病センター協議会、および、日本緩和ケア病棟連絡協議会に加盟している病院の腫瘍医413名、緩和ケア医88名、腫瘍看護師2735名、緩和ケア看護師593名(回収率:医師53%、看護師83%)が解析対象となった。
 輸液量0.5〜1L/日および1.5〜2L/日の終末期肺癌および胃癌患者において、腫瘍医、緩和ケア医、腫瘍看護師、緩和ケア看護師が報告した脱水症状(口渇、全身倦怠感、意識レベル、それぞれについて)の改善の割合は、30%以下であった。
 輸液量0.5〜1L/日の終末期肺癌患者において、腫瘍医が報告した体液過剰症状(気道分泌、浮腫、胸水、呼吸困難感、それぞれについて)の悪化の割合は、5.8〜13%であり、緩和ケア医、腫瘍看護師、緩和ケア看護師では20〜50%であった。
 輸液量1.5〜2L/日の終末期胃癌患者において、腫瘍医が報告した体液過剰症状(気道分泌、浮腫、腹水、呼吸困難感、それぞれについて)の悪化の割合は、9.3〜24%であり、緩和ケア医、腫瘍看護師、緩和ケア看護師では16〜68%であった。
 輸液量を1.5〜2L/日から0.5L〜1L/日に減量した場合、終末期肺癌および胃癌患者において、緩和ケア医、緩和ケア看護師が報告した体液過剰症状(気道分泌、浮腫、胸水/腹水、呼吸困難感、それぞれについて)の改善の割合は20〜70%であった。逆に、腫瘍医、腫瘍看護師が報告した脱水症状(口渇、全身倦怠感、意識レベル、それぞれについて)の悪化の割合は7%以下であった。
結論
 腫瘍治療学、緩和ケアいずれにおいても医師、看護師は、終末期癌患者に対する輸液療法によって、体液過剰症状の悪化がみられ、脱水症状の緩和には限られた効果しか得られないことをしばしば観察した。以上より、癌終末期には輸液はルーチンには行われるべきではなく、個々の患者ごとの包括的な評価に基づいた個別化した治療が強く要求されることが示唆された。

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