Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.27
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2005  27
巻頭言
延命治療の差し控えと中止をめぐって:学会として取り組みを
筑波メディカルセンター病院 緩和医療科  志真 泰夫
 今年、私は6月にパシフィコ横浜で開かれる第10回緩和医療学会総会のシンポジウム「終末期をめぐる課題」で司会を担当する。このシンポジウムの目的は「鎮静」「延命治療の中止」「水分・栄養の補給」という3つの課題を取り上げて、臨床医学と臨床倫理学のふたつの側面から検討しようというものである。もうひとりの司会を務めてくださる清水哲郎先生は緩和医療学会創立当初から学会に参加され、最近は「臨床倫理検討システム開発プロジェクト」に取り組んでおられる。シンポジウムで取り上げたこの3つの課題に共通するテーマは、「延命治療の差し控えと中止」である。一昨年の厚生労働省による医師に対する「終末期医療に関する意識調査」によれば、医師が担当している患者をがん終末期(およそ予後6ヶ月以内と想定)と判断した場合、「延命治療を続けるべきだ」という回答は13%にすぎない。しかし、医療現場における延命治療の現実は調査に対する回答とはかけ離れている。その原因はいくつか考えられるが、まず「延命治療の定義」が曖昧であり、次に延命治療を差し控えや中止の手順、「意思決定の過程」が曖昧なことだと私は考える。確かにそれらを曖昧にすることで暗黙のうちに「和を尊ぶ」という日本的人間関係が保たれてきた。しかし、最近それでは済まない事件が相次いでいる。3月25日、医師が患者の気管内チューブを抜いて、その後筋弛緩剤を投与して死に至らしめた「川崎協同病院」事件に有罪の地裁判決がくだされた。また、同日に広島の病院で医師が脳梗塞と肺炎で入院にしていた患者の気管内チューブを抜いて死に至らしめたとして警察の事情聴取を受けた。
 「延命治療の差し控えと中止」の問題は救命救急、高齢者医療の現場でも重要な課題であるが、緩和医療学会としてもそろそろしっかり論議する時期が来ていると私は思う。

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