Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.26
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2005  26
書評
見えないものと見えるもの−社交とアシストの障害学(ケアをひらくシリーズ)
著者 石川 准/医学書院
医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 緩和ケア室  的場 和子

 「全盲の東大合格第一号」で、社会学者兼プログラマであり、さらには障害学会の初代会長でもある「できる」石川氏が、「できないこと、弱いこと」そして、支援を必要としている人への「気遣い=ケア」について語ったのが本書だ。日々の臨床で少し煮詰まったとき、視点を変えて眺めてみたいときなどにお勧めしたい。
 石川氏のケアの思想は、「高度に文明化された社会における『他者を心地よくすべし』という規範」であるという。冒頭で、自らの援助者(視覚障害者への音声翻訳ソフトプログラマ)としての姿勢を吟味し、「社交」という視点をケアに持ちこむ。さらに様々な素材を取り上げながら、「感情」を焦点に、一見軽やかに実は奥深く、社交とアシストについて論じてゆく。ケアも社交であるという石川氏は、「病院もまた、患者と看護師と医師にもっと気持ちよく感情労働できる舞台=もっと社交的な場にしてはどうか」、と提案する。もちろん、生死と密接に関わる場である病院は、社交モードのみでは立ち行かず、破綻が必定であるかもしれない。その時には「感情公共性」という別のモードの幕が開くといい、「高度に文明化された社会」での、その必然性を説いてゆく。さらには、「誰もが、そこそこ元気に、自由につつがなく暮らせる社会」の実現にむけて「効用の平等」よりも、必要に応じた「配慮の平等」を、と主張してゆく。
 本書の構成は、インタビューや知人とのメイル交換を折り込むなど、軽妙な語り口だが、その内容は示唆に富む。ただ、時に論旨のつながりが読みとりにくい感は否めない。ところどころ拾い読みをし、また戻り、そしてまたはじめからと、何度も楽しませていただいた。まるで万華鏡のように、少し傾けるだけで、まったく違った煌めく像が次々現れ、思わず感嘆の声を上げてしまった。これも読者との「社交」を意図しての著者の仕掛けなのかもしれない。(2004年1月刊、A5版270ページ、2,100円(税込))

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