Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.26
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2005  26
学会印象記
第10回日本臨床死生学会
千葉県がんセンター整形外科  安部 能成
 2004年11月20〜21日、東京医科大学教授の飯森眞喜雄先生を大会長に西新宿の東京医科大学病院の臨床講堂で開催された第10回日本臨床死生学会で発表の機会を与えられたので報告させて頂きたい。節目の年にあたる今回の大会テーマは臨床死生学の10年であった。 「臨床死生学の10年」と題された会長講演は本学会の歩みを巧みに整理して会員に提示されたもので一見の価値があったが、初日の午前という設定のためか聴衆の少ないことが惜しまれる。 昨年、2会場並列であった一般演題は一本化され、初日17題、翌日6題、計23演題が、医師、看護、心理、リハビリテーションなど、幅広い立場から発表された。中では、いのちの教育におけるホスピス医の出前、死後の献体の歴史、終末期を3種の病態に分類して哲学的に考察された内科医の関わり、自立・自律を支えるケアの困難さ、見取りに関する職員の視点の分析、がん患者に対する家庭内暴力の検討、子供と死別の問題などが注目された。しかし、「臨床」は温もりを感じさせるために命名されたという会長講演とは裏腹に、心理学的研究における構成法のすばらしさと臨床現場との解離、多数派を占めた看護系の発表に臨床的踏み込みの足りなさを感じた。 特別講演としてフランスから招かれたWHO名誉事務局長の中嶋宏先生の「健康におけるスピリチュアリティー」は単なる医学に止まらない国際的水準の研究における視野の広さを学んだが、それ以上に、日本の問題点は人材も教育もないこと、という中嶋先生の御言葉が忘れられない。 シンポジウム関連特別講演である京都大学教授の山中康裕先生の「がんとこころ」からは、薬と言葉を扱うと思われていた精神科医の中に、身体活動の使い手が居られることを教えられた。また、優れた臨床家が一つ一つの症例に時間をかけて丁寧に診ていくことが如何に多くを学ぶことになるか、という実例を大変なエネルギーとパフォーマンスで示された。 最後を締めくくるシンポジウムは「がんと心―再発・転移から―」と題し、竹中文良・松島たつ子両先生の司会で行われた。第1席の石谷邦彦先生は緩和ケア医の立場から、第2席の岡村仁先生はサイコオンコロジーの立場から、第3席の安達勇先生は代替医療の立場から、第4席の伊藤良則先生は腫瘍内科医の立場から、第5席の近藤まゆみ先生はがん専門看護師の立場から、それぞれの意見を発表された。前提と総括を竹中先生が、途中の進行を松島先生が手際よく進められたチームワークもさることながら、シンポジストの発表も力作揃いで、学会参加の満足度を高めていた。 盛会の内に大会を終えられたのは飯森会長をはじめ、東京医科大学の皆さんの御努力によるものに他ならない。なお、次回は2005年秋に東洋英和女学院大学大学院を会場に斉藤先生を会長として開催される予定である。

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